調達の面白い取組み(坂口孝則)

むかし、あのピーター・ドラッカーは「変化が怖いのではない。ほんとうに恐るべきは、昨日のやり方に固執することだ」と述べた。けだし、名言ではないだろうか。しかし、現在では、多くの企業が過去の成功体験にしがみつこうとする。

現在、「透明性の確保が重要だ」と口ではいう。しかし、この透明性とはなんだろうか。なんでも公開して透明にすることだ。それならば、自社の調達部門が、何をいくらで購買しているかを公開したらどうか。「いや、サプライヤとの契約で、開示できないのだ」というだろう。それならば、サプライヤにもちかけて、価格を公開してもいいか聞いてみたらどうだろうか。

「それは現実的ではない」と誰かはいうかもしれない。それに「公開して、なんのメリットがあるのか」と。ただ、こういうことが起きたらどうだろう。あなたの会社が扱う最終製品を購入するユーザーが、調達価格や原価を知りたがっている、と。自分が払う価格が妥当かどうか、調達原価を知りたいのだ、と。

歴史的には、これをオープンポリシーと呼ぶ。原価明細を明らかにしてくれたサプライヤから優先的に付き合うというわけだ。ただ、概念としてはわかるものの、実践するのは難しい、といわれていた。

しかし、EVERLANEの取り組みはどうだろうか。

https://www.everlane.com/products/womens-boyfriend-blue-denim-jeans

ちょっと衝撃を受けるかもしれない。これはアパレルメーカーだが、透明性を異常なほど確保している。しかも、人気が沸騰しているのだ。上のURLは、女性ものパンツだが、68ドルだ。恐ろしいのは、下の箇所で、原価をすべて公開している。

見てみてほしい。材料がいくらで、調達品がいくらで、労務費がいくらで、関税等、輸送費がいくら……なるほど徹底しているのが企業のウリだとしたら、この透明性の確保が一つの担保となっている。きっと、これからの透明性確保は、これくらい過激になっていくだろう。

しかし、それにしても、EVERLANEほどの過激な取り組みであれば、消費者も賛同しやすいに違いない。調達を通じたPR効果がある。これこそ、90年代に、先人たちが望んでいた「調達・購買の地位向上」なのではないだろうか。精神主義ではなく、具体的なものだ。正直、EVERLANEが、どれだけ頻度をあげて原価を更新するかはわからない(だって材料費は一日ごとに変わるはずだ。歩留まりの問題もあるし)。ただ、原価公開の一つの取り組みとしては取り上げたい。みなさんの会社は、すぐには難しいだろうが、施策として私は検討しても面白いと思う

(つづく)

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