ほんとうのBCP作成方法 4(牧野直哉)

個人版BCPは以下のリンクからダウンロード可能です。
http://ur0.link/KWyg

2.共有化

個人版BCPを作成したら、家族で共有します。スマホにデータで保存し、紙で配付して財布やバックに入れておきます。いざ!というときに必要なデータですから、いつも参照できる、こまったときに活用できる環境整備を、家族の行動様式に併せて確認します。

実際にやってみると、大人よりも子供や高齢者に「常に持ち歩く」ための課題があります。会社員の場合、出勤するのに大小は別にしてかばんを持ち歩きますね。一般的なコピー紙、印刷紙は、1枚約4gです。かばんに折って持ち歩いても、ほぼ重量的な増加は感じません。

子供や高齢者の場合、外出先によって持ち歩く「かばん」が異なります。子供は、学校と塾や習い事でかばんが違っていたりします。その場合は、複数コピーしてどのかばんにも入れておくのが得策です。

なお読者からこのような御質問を頂きました。

「個人版BCPの記載内容は正に個人情報の塊であり、ハード(紙)で持ち歩くのは不安、漏えいリスクにどのように対処すべきか」

この点は、日常的な紛失による漏えいリスクと、非常時の連絡が取れないリスクで、どちらを重要視するかで決定します。個人の価値観もありますし、リスク顕在時はまずスマホや携帯電話で連絡を試みるでしょう。したがってハード(紙)を持参するかどうかは個人レベル決める問題です。個人的には、漏えい時の情報保護を目的にした対策を施しています。具体的な方法は、牧野個人の情報セキュリティ管理レベル維持を目的に、どうしても知りたい方のみメールで御連絡ください。ポイントは「家族であれば誰でも知っている内容の活用」です。

3.定期的な更新

これも多くのビジネスパーソンであれば、連絡先も変わらないかもしれません。しかし子供の場合中高生であれば3年ごとに学校が変わりますね。何か変化のあるたびに、記載内容の更新が必要です。

国内では、1月は阪神淡路大震災、3月は東日本大震災、9月は防災の日に関連した報道や情報が増えます。そういったタイミングで内容の更新を行う。理想的には、内容の更新があったときに、各自から全員へ都度連絡して最新状態を保ちます。

こういった取り組みは、災害発生時に代表される混乱時は、情報通信が一時的に難しくなります。そういった事態に最低限のアクション=連絡したい人へ連絡するに集中するための準備です。まず連絡先を検索するにも、検索スピードも平時とは異なってきます。恐怖や変な想像に駆られて、誤って行動しないためにも、常に最新情報に更新しておきましょう。

●個人版BCPにもとづいた災害発生時の初動


<クリックすると別画面で表示します>

個人版BCPの情報が必要になる状況は、平時と異なっています。例えば、自宅やオフィスといった日常的に長時間すごす場所で命の危険は感じませんよね。通勤で公共交通機関を利用し自家用車を運転している場合も、自宅やオフィスと比較して相対的なリスクは高まりますが、でも差し迫る命の危険は感じないはずです。

「平時と異なる」とは、そういった命の危険が高まっている状況です。例えば、大きな揺れに遭遇した建物の強度が大丈夫かどうかは、揺れに遭遇した直後に確認しなければなりません。また海沿いの地域にいた場合、大きな揺れの震源が内陸なのか、海底なのかによっても、いる場所のリスクは大きく異なります。

1.安全確保
迫りくるリスクに対して、今この場所が安全かどうかを判断し、自身の命を守らなければなりません。これは、場所によって正に対応が異なります。未来調達研究所で行っている「調達・購買 私塾」や各種イベントの開催会場を次の通り分析しました。


<クリックすると別画面で表示します>

・場所
当社がイベントに使用する会場は、地方行政が管理する建物です。したがって建物の管理者がいます。また日常的に不特定多数が集まる場所です。この2点から、もし何か大きな災害が発生した場合は、建物管理者の指示を仰ぐと決めています。

・時間
続いて、開催時間です。平日夜の開催の場合、会場を一歩出れば暗さによって、昼間と比較すれば、視覚情報は限定されます。また会場のある街である新宿は繁華街であり、昼間と比較すれば夜は平時であってもリスクがアップします。

・日
このイベントを行ったのは金曜日でした。一般論で平日と休日でみれば、平日で週末なので「人手の多さ」度合いはどうでしょう。新宿はギネスブックにも登場する世界一の1日当たり平均乗降者数を誇ります。新宿駅の規模であれば、昼も夜も平日も休日も人は多いですよね。非常時には人の多さもリスク化しますので、注意が必要です。

・季節
他の内容に比較して重要度は低いかもしれません。しかし停電した場合を想定すると、真冬の寒さや真夏の暑さをどうしのぐか?も大きなテーマですね。

この会場の場合、会場そのものの安全性や安全度合いは、管理者の指示に従います。もしその場所にとどまれるのであれば、とどまって災害の全体像にまつわる情報収集を行います。開催しているのは夜なので、自宅へ帰るにしても、一晩は会場で過ごし、経路の安全確保が確認できたら日の出とともに帰宅するのが私のプランです。

ちなみに東京都内の場合、震災発生時の火災発生リスクの高い地域が、山手線の周囲に幾つかあります。(http://www.bousai.metro.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/000/422/shiryo7.pdf )私の自宅への経路も、この火災の発生状況によって、どうなるかが決まるでしょう。

こんなイメージで、よく行く場所については、あらかじめ想定しておくと、いざその瞬間になったときに慌てる度合いが少なくて済むと考えています。

(つづく)

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