調達・購買戦略入門(坂口孝則)

25のジャンルにわけて解説しています。今回は引き続き決算書について考えます。

 

損益計算書と貸借対照表を学んできました。しかし、損益計算書や貸借対照表ではわからないことがあります。それは、「結局、いくらお金が入ってきて、いくらお金が出ていって、いくら残ったのか」ということです。損益計算書では売れた分しか計算しないし、貸借対照表ではその時点の資産・資本はわかるものの、その過程がわからりません。しかも、実際の発生費用と計上額が異なる「減価償却」なるものまであります。さらに、売ってお金を得る時期と、仕入れの代金を支払う時期がズレている場合もあります。

そこで考案されたのがキャッシュフロー計算書です。ここ10年ほど、上場企業は作成が義務化されてもいます。このキャッシュフロー計算書では、企業の各活動における「現金及び預金」の増減を表現します。キャッシュフロー計算書は、会社の現金の増減を (1)営業活動 (2)投資活動 (3)財務活動 にわけて表現します。

キャッシュフロー計算書では、営業活動・投資活動・財務活動それぞれの合計を合算することによって、前決算日キャッシュという「中身」が重視されます。実際の現金の増減が企業を見る尺度として重要視されるようになってきました。現金の増減をより重視する経営手法を「キャッシュフロー経営」と呼びます。

営業キャッシュフロー:本業から生じるお金の増減のこと
投資キャッシュフロー:設備を買ったり有価証券を買ったりして生じるお金の増減のこと
財務キャッシュフロー:資金調達や借金返済によって生じるお金の増減のこと

キャッシュというのは、現金やすぐに現金化できるものを指します。「すぐに現金化できるもの」っていうのは、経営者の判断に委ねるところもあります。とはいえ、損益計算書の利益とは違って、ゴマカシがきかないというイメージは持ってもらえるでしょうか。だから、利益は「操作可能」だが、キャッシュは「事実」といわれます。

キャッシュインフロー:実際に受け取ったキャッシュのことで、キャッシュフロー計算書上では、「+(プラス)」に作用する
キャッシュアウトフロー:実際に支払ったキャッシュのことで、キャッシュフロー計算書上では、「-(マイナス)」に作用する

キャッシュフロー計算書を見るときのチェックポイントは次の通りです。

① その期のキャッシュは最終的にプラスになっているのでしょうか?
→1年働いてお金が残っていないのは寂しいですよね
② どんな投資をしているでしょうか? それって役に立つのでしょうか?
→もちろん、将来に必要な投資もある。でも、使いすぎじゃないでしょうか? 決算書には会社が投資先について説明してくれているだろうから、大株主になった気分で読んでみましょう。
③ 財務活動での資金調達は健全?
→事業で成功してお金があまっている企業なら、ここはマイナスになることが多いはずです。銀行から借りた借金を返すはずです。どんどん増えている会社なら、それはお金が足りずにどんどん借りています。

●問題のないキャッシュフロー計算書:本業で得たキャッシュ(営業キャッシュフロー)で、投資と財務をまかなっている。つまり、営業はプラス(稼ぐ)、投資はマイナス(投資する)、財務はマイナス(借金を返す)

●成長期に見られるキャッシュフロー計算書:本業と財務がプラスになっており、投資がその合計以下になっている。つまり、営業はプラス(稼ぐ)、投資はマイナス(投資する)、財務はプラス(借金をする)

●アブないキャッシュフロー計算書:本業のキャッシュがマイナスなのに、投資でプラスにしている。あるいは、本業分で投資を賄いきれず、財務により全体をやっとプラス化している。つまり、営業はマイナス(稼げていない)、投資はプラス(資産を売っている)、財務はプラス(借金する)

最後には、これまで学んだ三つの決算書のつながりを学びましょう。三つとは、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書でした。これらは、独立しているのではなく、つながっているものです。

●損益計算書の「税引前当期純利益」は、キャッシュフロー計算書とつながる。
●キャッシュフロー計算書の現金等残高は、貸借対照表の「現金及び預金」とつながる。
●貸借対照表の「当期未処分利益」は、損益計算書とつながる。

損益計算書上の本業で得たお金が、キャッシュフロー計算書に飛んで行き、さまざまな費用を経て残ったものが、貸借対照表に記載され、その額が留保されるわけです。

この三つの決算書について、さまざまな指標があります。もちろん、そんな指標をいくつ知っていても悪くはありません。でも、もっと大切なことは、三つそれぞれの決算書が指し示す内容を理解することです。三つのつながりを知りましょう。

<つづく>

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