バイヤー現場論(牧野直哉)

12.見積書をみるとき

バイヤーがもっとも目を通す書類は、サプライヤから提示された見積書です。しかし、見積書といっても、その体裁や記載内容はさまざまです。ここでは、サプライヤから見積書が提出されたときに、必ずおこなう確認事項を学びます。

①継続して同じ評価をおこなう仕組み作り

見積書を入手したら、まず価格を確認します。そして、想定された価格との対比で、高い、あるいは安いと一喜一憂します。しかし、見積書を受け取って、価格を見ただけでは、実は一喜一憂できないはずです。価格に含まれる条件を確認しなければ、ほんとうの高い/安い判断はできないのです。

バイヤーは多くの見積書を受けとります。多くの見積書をいちいち詳細条件まで確認するのは難しいとの現実に直面しているバイヤーも多いはずです。そういった問題へ対処するために、見積書評価の仕組み作りが必要となります。既に多くの調達・購買部門でおこなわれている取り組みの例が、取引基本契約の締結です。取引をするために最低限サプライヤに順守してほしい内容を網羅した契約によって、見積書受領時の確認内容も簡略化できます。注意すべきは、取引基本契約を締結しているから、見積書の前提条件として疑いなく信頼して良いかとの点です。

取引基本契約で定められた内容が、順守されているかどうかを確認するために、サプライヤとの取引継続可否を判断する審査があり、サプライヤを評価します。定期的に評価した結果を持って、実際の取引の際にも「同じ結果が担保されている」と見なすのです。

②価格以外の条件を押さえる

購入対象が多岐にわたり、バラエティに富んだ内容となる場合、1つの取引基本契約内容を持って、取引全般が正しく管理されるのは困難です。そこで、取引基本契約に網羅されていない、購買案件ごとに管理すべき内容を確認する方法です。

サプライヤを評価する基準は、Q:品質、C:コスト、D:納期を基本とします。取引基本契約に網羅される内容は、この3点の基本的な部分となります。見積書の内容を評価する場合は、この基本に加え購入対象の性格による内容を加えたチェックポイントリストを作成します。これは、見積依頼するとき、内容を理解すると同時に、見積書に網羅されなければならないポイントの一覧表もあらかじめ作成をしておきます。

③見積依頼内容が網羅されているかどうかがポイント

見積書の確認は、見積依頼書の内容が網羅されているかどうかの見極めです。確認をやりやすくするためには、あらかじめ見積依頼対象の特徴に応じた添付資料を提出させます。価格の記載された見積書だけでなく、見積書に記載された金額には、どういった内容が含まれているのかを確認します。

複数のサプライヤへ見積依頼をおこなう場合は、見積条件にあらかじめ作成したチェックシートに見積内容を確認して記載してもらうのも、バイヤー側の手間を減らす有効な手段です。しかし、この対処法は、見積依頼側であるバイヤー作業量の削減と、見積を作成する営業パーソンの作業量の増加を伴います。見積依頼書の内容を分かりやすくチェックシートに反映させなければなりません。

見積依頼書の内容を、分かりやすく細部まで詰めるのは、バイヤー企業側にも大きな手間となります。しかし見積書の内容を理解し、的確な発注先を選定するためには、見積依頼書にこそ、もっとも時間を割くべきです。実際の現場では、時間の猶予などなく、最低限の記載内容でメールのみ、あるいはFAX一枚で見積依頼をおこなうケースもあるでしょう。しかし、そこで時間を削減しても、後々相応の時間を費やさなければ、適切な発注先の選定が難しくなると肝に銘じます。だからといって、闇雲に時間を費やせないのも事実です。そこで、できるだけ短時間で最大の効果を求めるために、確認ポイントの明確化と、チェックシートの確認によってプロセスを整備します。

<つづく>

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