短期連載・坂口孝則の情報収集講座(坂口孝則)

この大学からかぞえて20年ほど、ずっと「調べて書いて、発表する」行為を続けてきました。社会人になると、「この資料作っておいて」といきなり言われるケースは多いはずです。むしろ、会社員の仕事の大半は、資料作成といっても良いかもしれません。そこで自分なりに総括したい気持ちもあり、『情報収集講座』と題し、短期連載としてメルマガに掲載することにしました。

【第12回】会社について調べる①-つづき

次に書籍を使って企業を調べる方法です。なんといっても一番使えるのはアマゾンです。そのアマゾンに企業名を入力して検索してみてください。その会社にまつわること、そしてその会社のひとが書いた本が出てきます。調べる用途によるものの、もし社史を調べる必要があるとすれば、ホームページから社名の変更がなかったかも調べておきましょう。社名が変更していれば前社名で検索してもさまざまな情報が出てきます。

ここでアマゾンを取り上げましたが、大きくは紀伊国屋と丸善&ジュンク堂のサイトを使います。アマゾンはその本を買った人が、他にどのような本を買ったか、興味を持っているのかを表示してくれます。新品であれ、中古であれほとんどを購入できます。なぜ紀伊国屋等のサイトも併用するかというと、この関連サーチが微妙に異なるからです。サイト利用者の特性が違うため、アマゾンだと見逃していた関連書籍を発見できます。特定の会社に漏れのない調査を行うケースは重宝します。

なお、会社に関する調査では、関連書籍の購入基準として「すべて購入する」としておいてください。私は「あなたの著作のなかで何を読んでおけばいいですか」と聞かれるものの、「可能ならすべて読んでください」とお答えします。「リスクヘッジ」という言葉があります。ただ、発売されている本をすべて読んでおけば、少なくとも書籍から入手できる情報はもれなく獲得できるので、リスクヘッジが図れます。

なお、違う節で企業インタビューの要諦もお話します。私は誰かをインタビューする際、その人の本をすべて読むようにしています。これは義理ではなく、その人に接する際の礼儀だと考えています。新品が売っていないというケースは、図書館で借りてもいいですが、できるだけ中古で入手してください。

しかし、やや厳しすぎるルールと思ったかもしれません。あるいは、予算が限られるケースがあるかもしれません。その際には著者名か出版社名を確認し、クソ本を排除します。私の感覚では、意外に売れている本に限ってほとんど中身がないものがたくさんあります。また、読者の評価が低いもののなかに極めて貴重な情報が紛れ込んでいるものがよくあります。誰が信頼できる著者かはなかなか説明できず、慣れに依存します。ただ、その著者名で検索したとき、かなり怪しげな書籍のタイトルばかりが並んでいたというケースはふさわしくありません。くわえて、出版社で検索すれば、硬派な本を出している場合があるいっぽうで、タイトル先行の本ばかり出していないか確認してみてください。まあそれでも買わないより、買って読んだほうがいいので、著者・出版社によらず購入が基本です。

*購入した書籍の取り扱い方

次に、買った本の処理方法です。これには割り切りのコツがあります。せっかく買ったからといってすべてを読もうとしてはいけません。会社がお金を出しているからといって遠慮はいりません。あなたに必要なのは良質なアウトプットであって、書籍の感想文ではありません。

その書籍であなたが求めているのは、ほんの数行です。したがって、次のような方法で書籍を読みましょう、
□まずざっと目次を読む
□本をパラパラとめくって、図や表や写真などが入ってところ眺める
これだけで、おおよそあなたが必要としている箇所がわかるはずです。そして
□1ページから順にめくっていくものの、高速でめくる。1ページから30分ほどはゆっくり読んでもいいものの、あとはさっと流す
そうすると大体10分から長くても1時間あれば1冊の本を処理できます。そして必要なところに、問答無用に付箋や印をつけていきます。

そして重要箇所は、スマートフォンで写真を撮っておきましょう。そうしておけばのちのち、書籍がないタイミングでもその資料を参照することができるはずです。

*書籍の整理をどうするか

さらに、会社のキャビネットなどに書籍を並べるときは、簡単なルールを設定しましょう。どんどん並べていって、資料作成途中で一度でも参照したら一番左側に移すのです。そうしていると、次々に、左側に参照した書籍が残り、右側にはそれまで参照しなかった書籍が残ります。

すると右側の書籍は捨てていいはずです。私はねんのために全ページをスキャニングしていましたが、そのうち、いつでも手に入るので捨てるようにしています。もっと極端な方法を採用するひとは、買ってきた書籍のうち気になったページのみを破って置いておくそうです。しかし、それで困ったことはないそうです。たしかに、「この資料を参照にしよう」と頭に思い浮かんだ瞬間に、そのページのみしか対象ではないはずですよね。

またアシスタントなどがいる場合は、書籍のなかにある重要なグラフを、出典にあたったもらいパソコンで再作成してもらうとのちのち役立ちます。

【第13回】会社について調べる①-さらにつづき

次に企業にたいするインタビュー方法をお伝えします。といっても企業は口がありませんから、そのなかの人物にアクセスするしかありません。まず知り合いがいる場合は、紹介してもらうに越したことはありません。

ただ厄介なのは、インタビューしたい会社がわかっていても、その会社のひとを知らないケースです。そこで、プロの手法が役に立ちます。年がら年中、誰かにインタビューしている雑誌記者やメディアのような人たちの手法です。私はよくこの手法を真似て会社の人たちにインタビュー申し込みます。かなりの確率で引き受けてくれます。次に例文を載せておきます。そのまま、会社の代表メールアドレスに送ってみましょう。私の名前を入れ替えてください。

株式会社○○ご担当者様
突然のメールで失礼いたします。未来調達研究所株式会社の坂口と申します。
私ども未来調達研究所株式会社は、物流やサプライチェーンについての調査、研究を行っている企業です。
www.future-procurement.com
このたびは、社内研究の一環で、御社にご知見ご提供をお願いしたくメールを差し上げました。まことに恐縮ではございますが、ご検討をお願いいたしたく存じます。
ヒアリングの内容は、下のとおりです。

【ヒアリングの目的・趣旨】
当社では、企業のサプライチェーン強化のため、クライアントに提案・コンサルティング活動を行っております。現在、当社では「アセアン地域の発展と非関税障壁の撤廃見込み」をテーマに、実際アセアン地域でビジネスを立ち上げていらっしゃる方々にヒアリングを続けております。
今回のお願いは、上記テーマに関して、○○○株式会社様のご知見について、今後の見込みを含めぜひともお伺いさせていただきたいと思うものです。
もちろん、差し支えない範囲でけっこうですし、もしよろしければ御社を成功事例として発表することもできます。その場合は、御社のPRともなりえると存じます。当然ながら、お伺いした内容のうち機密が含まれる場合は、外部に公表することは一切ございません。
以上、突然のお願いで申し訳ありません。ただもし可能であれば、何卒ご協力賜りますよう、心からお願い申し上げます。

【お伺いさせて頂きたい内容について】
1.現在、アセアンご進出10年でビジネス環境が変わったこと、変わらないこと
2.お客様の声で、どんな変化があるか
3.インターネット拡大がアセアン事業に及ぼす影響は何か
4.アセアンは今後どういう方向に進みそうか

【場所・お時間について】
1時間ほどお時間をいただければ幸甚です。ご都合の良い場所・お時間にこちらからお伺いいたします。

【謝礼について】
ご相談のうえ、謝礼をご用意いたします。

以上となります。未来調達研究所 坂口孝則

*アポイントを受け入れていただくためのコツ

私の経験では、謝礼がお金だったとしたら、受け取ってくれる企業人はいらっしゃいません(もちろんフリーの個人事業主は別です)。それは社内規定によるのでしょう。企業人の場合は、お菓子などもっていくのがギリギリでしょう。

アポイント方法ですが、大きくは二つあり、会社のアドレスにいきなり送りつけてしまう方法。そして、代表電話にかけて趣旨を伝え、その後に連絡する方法です。また、「役員四季報」(東洋経済新報社)が出ており、そこから出身校などを調べ、自分と同じ大学出身者がいればそこからアポイントを取るのも一手です。また最近よくやる方法が、FacebookなどのSNSからアプローチする方法です。

そのときのコツは、できればあなたがその企業のお客である事実を述べることです。もちろん嘘をついてはいけません。ただ、あなたがホントにその会社の商品を買ったことがある、サービスを享受したことがあれば、相手からするとあまり無下に扱うことはできません。

そして何よりもその人がインタビューを受けてくれるかどうかは、引き受ける側にメリットがあるか、面白そうか、そしてインタビュイーがひとかどのひとかが結果を左右します。無名で実績がなくともなんとか考えて、アピールを忘れないようにしましょう。

<つづく>

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