決定版!調達購買視点での交渉論(牧野直哉)

<調達購買部門における交渉の基本>

シチュエーション別 交渉準備と注意ポイント

(3)売り手が強い(守勢)場合の交渉

①想定シチュエーション
・製品Aの業界は、業界企業の選択と集中が進み業界内が再編され、従来の業界大手3社体制が、来年度から1社となる。これまで取引を継続していたB社は、新会社Cでは主導権を握っているが、従来B社と競合させていたD社も同じ会社になった

このような状況の下、まずおこなうべきは、新会社が持つ、顧客への価値観の確認です。これまで購入していたB社は新会社の主導権を握るとされていますが、果たして従来の対応が新会社となって以降も継続されるのかどうか。この点は、営業担当者だけでなく、新会社の上位者に対しても、営業戦略の従来との変更点について確認を求めます。その上で、自社(バイヤー企業)としての対応スタンスを決定します。

②基本スタンス

・優先順位決定/絞りこみ

自社(バイヤー企業)の購入アイテムの「性格」を見極めます。新会社は、従来購入していたサプライヤーですから、従来の対応が継続するはずと思いこみがちです。しかし、同じような対応の継続は、確認をおこなった上であっても、全く保証されません。

そもそも3社が1社にまとまる目的・理由は何でしょうか。どのような目的・理由だったとしても、何らかの効率化がおこなわれる可能性が高いと判断できます。その「効率化」が、取引関係にどのような影響をおよぼすのでしょう。

従来のB社で、自社(バイヤー企業)が重要顧客の扱いであり、新会社Cとなっても、同じような対応が続くかどうか。これは、楽観論を除して見極めなければならないポイントです。

自社(バイヤー企業)では、新会社Cの効率化への対応に協力する姿勢を示します。具体的には、従来の取引プロセスを見直したり、従来の購入アイテムを見直して、自社(バイヤー企業)側でも、購入アイテムの整理統合を進めたりといった対応です。

こういった対応を、サプライヤーへの譲歩と捉えてしまう考えもあるでしょう。しかし、3社が1社になるといった事態によって、どのような変化があるのでしょうか。変化を見極めるまでは、できるだけ最低・最悪の状況を想定すべきです。

・守勢状態の打破(代替調達ソース開拓)

今回の想定シチュエーションでは触れていませんが、1社にまとまる3社以外のサプライヤーの存在を確認します。その上で、自社(バイヤー企業)への供給可能性を模索します。

上記2つの基本スタンスに共通する調達・購買部門の戦略としては、業界再編とも言える3社→1社への集約を、社内への影響力としての活用です。思いきった購入アイテムの集約へ活用して、規模の経済を活用したコスト削減へ活用したり、従来は競合状態にあったDも新会社Cに取りこまれてしまう状況から、新しいサプライヤーの開拓に、社内関連部門の協力を仰いだりして、守勢な状況を打破する第一歩とします。

③交渉結果を左右するポイント

次の三つのポイントを、3社が合弁するとの情報入手と共に対応し、守勢状況の打破を目指します。

・自社にとっての重要度による判断
(コスト?品質?安定供給?)
・どうしても譲れない(失われると困る!)
ポイントのみを確保する1点突破戦略
・交渉のタイミングを計って反転攻勢

(つづく)

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