決定版!調達購買視点での交渉論(牧野直哉)

<調達購買部門における交渉の基本>

シチュエーション別 交渉準備と注意ポイント

(2)継続取引の交渉

①想定シチュエーション

建材メーカーA社では、使用する材料の購入契約を、基本的に半年に一回「期間購入契約」として対象サプライヤー全てと締結しています。調達購買部門では、基本的に半年に一回、対象サプライヤーと交渉を実施して価格を決定します。取引条件は、すべてのサプライヤーと基本契約を締結しており、数量条件は半年分の引き取り保証がない購入見通し量を提示して見積もり依頼をおこないます。

②目標設定

・安定供給

継続的な購入を前提にし、一定期間ごとに価格を見直す仕組みは、自動車メーカーや電機メーカーに代表される製造業の調達・購買部門で採用されています。一定期間ごとに価格を見直すのは、調達・購買部門にとってもサプライヤーにとっても、とても厳しい対応を強いられます。その時どきの経済情勢や経営環境を反映した交渉戦略が必要です。

そしてもっとも重要なのは、あらゆる側面で「安定供給」の獲得です。これは自社(バイヤー企業)の要求量を納入するだけでなく、品質面や、価格面も含めた安定性を要求し、獲得し続けなければなりません。

・長期(半年かそれ以上)契約のメリット獲得

長期間であればあるほどに、サプライヤーにとっても自社(バイヤー企業)にとってもメリットがなければなりません。長期間の契約では、契約期間中のサプライヤーと自社(バイヤー企業)の双方が、緊張感を維持しなければなりません。緊張感を維持するためには、長期契約を締結した瞬間から、次の契約締結を目指し、具体的な成果を求める活動を、サプライヤーに求めます。もちろん、そういった活動への自社(バイヤー企業)の協力が、双方の緊張感維持に貢献します。

③交渉結果を左右するポイント

・継続的評価を根拠に加える
・継続的な改善活動の成果を交渉結果に反映
(要すればバイヤ企業主導で実施する)

長期契約を前提とした交渉では、供給継続が前提となります。これは、サプライヤーにとって非常に大きなメリットです。したがって、契約の見直しのみならず、契約の期間中であっても、サプライヤーのパフォーマンスを評価し、なにか問題があれば、その解消をサプライヤーに突き付けなければなりません。

そのためには、次の例のようなサプライヤー継続評価が必要です。

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すでにサプライヤー評価を実践している場合も、継続取引の場合は、契約対象期間の直前期だけでなく、最低でも過去3年間の格データの推移を踏まえて、サプライヤーのパフォーマンスを注視します。交渉内容や、交渉対象の期間が長い場合など、交渉内容によっては、さらに長期間の推移を用います。

例えば、上記の例から読みとれる内容としては、

・品質管理のスコアが急降下している
・売り上げ/アイテム数も減少している

といった問題点が読みとれます。これは、調達・購買活動の結果ですから、自社(バイヤー企業)の調達・購買部門でも掌握している部分もあるでしょう。そして、こういった過去の経緯をサプライヤーとしてどのように認識し、改善の必要性を理解しているかどうかを確認します。

(つづく)

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