サプライヤーの倒産 1(牧野直哉)

先日、取り引きしていたサプライヤーが倒産しました。過去に多くのサプライヤーの倒産に遭遇してきましたが、毎回、倒産状態への至る理由はさまざまです。いや、これ本当にさまざまです。千差万別の倒産模様から、対応の基本的なポイントを考えます。

まず、近年の倒産動向です。日本の総法人数:約253万社 (国税庁の平成24年度版「会社標本調査結果」より)
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon/top.htm

同じ年度に休廃業や倒産によって、事業継続できなくなった企業
:約3万6千~4万社

この2つのデータから事業継続できなくなる企業の出現率は1.5%です。売り買いを問わず100社と取り引きしていると、年間1~2社は倒産・休廃業してもおかしくないといえます。企業の倒産や、休廃業、解散は、調達・購買部門が直面し、日常的に顕在化の可能性があるリスクの1つです。

最近、企業倒産件数は減少傾向を示しています。しかし、同じく供給の断絶へと至る企業の休廃業・解散は、最近10年増加傾向を示しています。したがって、調達・購買部門でサプライヤーの継続性を判断する場合、倒産のみならず、休廃業・解散も含めて考える必要があるのです。

<倒産件数の推移(クリックすると、別画面で表示されます)>
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2014_2nd.html

<「休廃業・解散企業」動向(クリックすると、別画面で表示されます)>
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20150209_07.html

では、倒産、休廃業・解散を含めたサプライヤーの継続を、どのように確保し、継続できなくなる事態へどうやって備えるべきでしょうか。

私は、平均すると年間一件程度、サプライヤーの倒産、休廃業・解散に遭遇しています。調達・購買の現場で、サプライヤーの事業継続が断たれた瞬間、継続できなくなった理由と、サプライヤーへの発注内容によって、すぐに代替供給ソースを確保する必要があります。さまざまなケースに共通する倒産対応のポイントを考えます。まずは、サプライヤーが倒産した報を受けとったときの行動です。

いわゆる倒産とは、次の六つの状態を指します。企業が債務の支払い不能に陥って、事業活動の継続が困難になった状態です。

(1)銀行取引停止処分を受ける(手形交換所又は電子債権記録機関の取引停止処分を受けた場合)
(2)内整理する(代表が倒産を認めたとき)
(3)裁判所に会社更生手続き開始を申請する
(4)裁判所に民事再生手続き開始を申請する
(5)裁判所に破産手続き開始を申請する
(6)裁判所に特別清算開始を申請する

サプライヤーが倒産に陥った場合、バイヤー企業には、次の1~10のアクションが必要です。

1.債権(支給材、治工具・型、前払い金)の有無と金額
(管財人とのコンタクト・債権者集会へ出席要否判断)
2.債務の有無と金額(買い掛け未払い金)
3.関連部門への周知(経理財務・総務も含む、FAX注意)
4.サプライヤー評価(採用時、継続時)資料確認
5.倒産したサプライヤーの関連企業へのヒアリング
(再外注品の有無確認)
6.発注残の確認(アイテム、数量、納期)
7.直近ビジネスへの影響度判断
(目安は、倒産したサプライヤーからの調達L/Tの期間)
8.具体的な影響(被害)明確化
(代替サプライヤーへの打診)
9.倒産したサプライヤーの担当者との面談
10.継続した情報収集

サプライヤー倒産の報を受けた日に、1~8までの情報をそろえます。その上で、影響を想定し、自社の事業活動への悪影響を最小限度にするための動きへとつなげます。

ここで、サプライヤーの倒産や、休廃業・解散が、バイヤー企業におよぼす影響を考えてみます。倒産や休廃業・解散は、サプライヤーからの供給の断絶が、もっとも大きな問題です。支給材や前払い金、バイヤー企業資産の治具・工具がサプライヤーになければ、供給の断絶問題のみになります。バイヤー企業への財務面への影響も全くない、もしくは限定的なはずです。

ここで、倒産は「再建型」なのか、それとも休廃業・解散に象徴される「清算型」を見極めます。清算型の場合、事業継続の放棄であり、経営者としての究極的な開き直りの決意です。再建型は、サプライヤーの従業員の動揺や、原材料の購入が現金決済になるといった問題があるものの、とりあえず事業は継続します。したがって、清算型の場合は、代替供給ソースの確保を早急におこなわねばならず、発注が残っていた場合、すぐにアクションしなければなりません。継続型の場合は、再建計画の確定まで注視は必要ですが、緊急性との観点では、清算型よりも少し時間は稼げます。

倒産や休廃業・解散に際して、調達・購買部門は、自社で事業を引きうける、資金面での支援をおこなうといった策以外には、状況を打開する手立てがないのが実情です。したがって、倒産や休廃業・解散対応のポイントは、そうなるまえの予防処置です。倒産や休廃業・解散に至る前の予兆を、サプライヤーマネジメントを通じてつかみ、発注方針へと反映させます。

(つづく)

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