ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
今回から、サプライヤマネジメント~調査・格付・管理について述べます。調達購買部門における業務の中心的な部分です。皆さんの普段の仕事内容と照らし合わせて、過不足と、内容の確認をおこなってください。また、より高い付加価値の獲得を調達購買部門で目指す場合も、サプライヤの持つリソースをどのように活用するかが最重要課題です。その場合も、基礎的なサプライヤとの関係性が重要な意味を持ってきます。調達購買部門における業務処理ができるようになったバイヤが取り組むべき課題であるサプライヤマネジメントをお伝えします。
●6-1 なぜ、サプライヤを管理しなければならないか
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調達購買部門が仕事を進め、成果を獲得するために不可欠なサプライヤ。事業の安定運営を続けるためには、調達購買部門がサプライヤマネジメントを実践し、サプライヤの状況を的確に掌握し、かつ適切な管理が必要です。「適切な管理」とは、バイヤ企業のニーズに確実に応えるための管理です。
☆サプライヤマネジメントの定義
バイヤ企業の要求条件への対応が、サプライヤの責任です。サプライヤがその責任を果たせるかどうかを確認し、バイヤ企業はサプライヤマネジメントを実践して、サプライヤの活動を管理しサポートします。サプライヤに求める製品や、品質基準といった購入条件は、企業によって異なります。したがって、サプライヤマネジメントの内容は、企業によって実践内容が異なります。サプライヤマネジメントとは、企業ごと独自の判断基準によってサプライヤを評価します。評価した結果によってサプライヤを区別して扱います。この2つのポイントの実践によって、企業の競争力や優位性の確保に貢献します。
「独自の判断基準」は、バイヤ企業の企業戦略にその根拠を求めます。バイヤ企業が、市場において、どんな優位性によって競合他社に勝とうとしているのか。その獲得したい優位性の構成要素に、サプライヤからの購入品やリソースが貢献できる可能性を見極めます。
「区別して扱う」とは、まずバイヤ企業が設定したサプライヤ評価基準を活用して、サプライヤを評価します。サプライヤ評価には、新規採用時におこなう評価と、サプライヤの経年変化を掌握するための評価があります。企業とは、その時々の市場環境に合わせて変化します。同じ購入品を買い続けていたとしても、バイヤ企業の知らない部分で、サプライヤは変化しています。変化を掌握して、最適なサプライヤを選び続けるためには、サプライヤへの継続的な現場掌握の取り組みが必要です。
☆変化させないために必要なサプライヤ管理
購入品の品質管理は、今や源流管理が主流です。実際に購入した製品で品質を確認するのと同時に、設計段階から品質を損なう可能性を排除する取り組み、そしてバイヤ企業に不適合品が納入されない仕組みです。バイヤ企業のニーズは、品質か確立された購入品の納入です。サプライヤに対するもっとも重要な管理とは、新規採用時に確認した良好な状態が、維持できているかどうかです。
サプライヤを取り巻く環境は常に変化しています。経済環境から、天候、作業員に至るまで、常に変化の中にあります。その中で、常に同じ品質を確保し、継続するためには、周囲環境の変化に応じて同じアウトプットを出し続ける仕組みが必要です。バイヤ企業は、サプライヤマネジメントの実践を通じて、その仕組みが維持され、機能しているかどうかを確認し、問題点を指摘してサプライヤをサポートします。
☆最新のサプライヤマネジメント方向性
バイヤ企業の事業活動を進めるために必要なサプライヤの確保が、サプライヤマネジメントの目的です。しかし、同じようなリソースを持つ複数のサプライヤから購入する場合は、確固たる目的が必要です。分散して発注し、競合状態を創出する。あるいは、想定されるリスクに対応して、サプライヤの所在地を分散させるといった明確な根拠がなければなりません。
顧客からの高い品質管理要求や、CSR意識の向上、サプライチェーン全体での持続可能性を確保する環境意識の高まりによって、サプライヤ1社と取引を継続するためのバイヤ企業が費やす手間やコストは、増大傾向にあります。グローバル化の進展によって、サプライチェーンは地理的にも広がっており、バイヤへの負荷も増えています。
最新のサプライヤマネジメントの方向性は、できるだけ少ないサプライヤによる事業運営に必要なリソースを確保です。取引しているサプライヤの社数が増加しても、同じ割合でバイヤ数が増えません。購入量の集中化による低コストの追求も、取引を行なうサプライヤの数の最少化はメリットを生みます。サプライヤとの関係構築と維持には、バイヤ企業の手間や費用が必要となります。「このサプライヤは、自社の事業運営に必要か」との厳しい視点も、適切なサプライヤマネジメントの実践には欠かせません。
(つづく)