一読即決!「ぼくは愛を証明しようと思う。」(坂口孝則)
まず、正直に申し上げておきます。この本を作ったのは私の知人、というより、友人です。「ぼくは愛を証明しようと思う。」は、恋愛工学なるテクニックを使って、男女恋愛を成立させようとする問題小説です。
もっといってしまえば、男性が女性と会ってセックスするまでの事細かなスキル(テクニックなのか、あれは?)を恋愛工学と呼び、小説を舞台に書いたものです。主人公は弁理士でモテない男性。せっかくできた彼女も浮気されて失ってしまいます。すると、恋愛の達人である永沢さんと出会い、恋愛工学を伝授され、モデル級の女性とセックスできるようになっていく……。こう書けば、ミもフタもないストーリーですが、それだけです。
この小説を読んで、強烈な拒絶感をいだくひとが3割、5割は「ふうん」と感心し、残り2割は違和感、といった感じでしょう。感想がバラつくというのは、傑作であるということです。感想を正直に申し上げれば、「おいおい、いまさらこういうていどの心理テクニックでうまくいくかよ」とは思います。しかし、偽悪的にも本書を書き上げた著者に拍手を捧げたいと思います。
途中、女性をモノとしか扱っていない箇所や、女子の容姿をランクづけする箇所などは、嘔吐をもよおすに十分なものです。しかし、著者はそのていどの批判は、当然ながら、予想していたでしょう。問題は、とはいえ、多くの男性がムキになって(そして女性もムキになって)反論したがるところに本書がえぐりだした真の問題点があるのでしょうね。
そしてこのラストで、思わぬ物語が発動します。それはネタバレなのでやめておきますが、「らしくない」結論ではあります。
本書は、恋愛の成就は、すべて確率論であると説きます。そりゃ、一人に声をかけるよりも、100人に声をかける方が確率は高くなるなんて当たり前じゃないか。そのとおりです。しかし、常識人たる私たちは、なかなか一日に20人もの女性に声をかけられません(し、かける発想もありません)。さらに、確率を数%であっても、あげようとする努力はフツーしません。しかしこの著者は、狂気じみた執拗さで、ナンパ成功確率を向上させようとします。その狂気こそ、魅力であり、同時に反感を抱く原因なのでしょう。
彼女がいない男性、彼氏がいない女性、結婚をためらう男女、そして夫や妻とうまくいっていない男女へ。本書を読んでみてください。もし感想を私にいただければ、みなさんの名前は匿名で感想を伝えます。
<了>