調達屋のための物流知識~第2回目(坂口孝則)

たぶん一般のひとからすると、物流も調達もひとくくりで、違いなどないと思います。もちろんみなさんは調達に属していらっしゃるので、物流部門のかたはいらっしゃらないでしょう。ただ、調達屋としても、最低限は物流を知っていてもソンはしません。そこで、ここから数回にわけて、「調達屋のための物流知識」を説明します。

今回は、物流のうち、実際の貨物量を把握しましょう。「国土交通省/最新の陸運統計要覧・運輸」が使えます。これで都道府県の貨物流動がわかります。よく生産回帰を盲信する論者がいますが、これを調べるべきですね。生産回帰がほんとうならば、その地域の貨物流動は多くなるはずです。残念ながら、その傾向は見られません。ということは、ほんとうに生産回帰が生じているのでしょうか。

さて、ではなぜ物流業者が運ぶのか、という疑問が出てきます。誰もが勝手に運べばいいのではないか、とまで思うひとはいませんよね。物流業者が運ぶほうが効率よいに決まっています。ただ、その直感を論理化したものが、フェデックスでした。フェデックスの創始者は、物流業者の存在意義を「ハブアンドスポーク」と説明しました。「拠点の空港(ハブ)に荷物を集中させ、各拠点(スポーク)に分散させる方式です」ともいわれます。

これをあえて数的に説明します。たとえば、n人の貨物を送る側と、n人の貨物を受け取る側がいるとします。そうすると、考えうる流通線はn×nとなります。しかしフェデックスが中間にはいり、一手に集荷と配送を行えば、n+nになります。nが1でない限りは(そんなはずはありえませんが)フェデックスが存在したほうがよいことになります。

ご参考までに申し上げるなら、これは調達・購買部門の存在意義にもつながります。社内と社外にそれぞれ、nとnの関係者がいるとしたら中間を司る調達・購買部門がいればよいに決まっていますよね。これも業務効率の観点から説明できるはずです。

としたら、物流業者が増えるほど、国民全体の効率は向上することになります。少なくとも、物流業者が業務しやすい流通整備をするのは国富を増やす手段であるはずです。これは各国で見られるプロパガンダで、物流関係者はそのように利益誘導をしてきました。

しかし現状はどうでしょうか。ここに参考になる資料があります。PDFの右下にふってあるページの7と9を御覧ください。とくに9を見ていただくとわかるのは、日本は道路後進国である事実です。首都圏の整備率は47%に過ぎず、ソウルや北京に圧倒的敗北を喫しています。もちろん、道路の質がありますから、勝敗をつけるのはナンセンスではあります。ただし、日本の道路混雑の一因として、これほどの未整備率があることを覚えておいたほうがよいでしょう。

次回も続けます。

(つづく)

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