バイヤ超基本業務(牧野直哉)

7.品質確保への取り組み

バイヤがサプライヤから購入する場合、購入対象のQCDの確保が最重要課題です。C:コストは、調達購買部門への社内的な期待も大きく、サプライヤから提出された見積に、まず価格交渉をおこなうバイヤは多いはずです。C:コストは、少しでも安く購入する意識は、比較的高く保たれています。

つづいて、D:納期。前回お伝えした通り、企業によって、調達購買部門内に責任がある場合と、他部門にある場合が分かれます。しかし、サプライヤからの購入価格を決定する際には、価格の妥当性を判断する際にリードタイムは欠かせない情報です。したがって、管理する責任の有無にかかわらずD:納期も意識されやすい要素です。

最後のQ:品質。これがとても悩ましい。近年では調達購買部門内に、サプライヤの品質を管理する機能を持たせているケースもあります。そういった企業では、調達購買部門内にも品質に関する高い意識が保たれています。しかし、残念ながら多くの日本企業では、調達購買部門における品質の取り組みが有功に機能している例は少ないのが実情です。

●価格と品質の対峙(たいじ)の最前線

調達購買部門に対する社内の最も大きな期待は、購入価格削減です。少しでも購入価格を抑える取り組みは、調達購買部門も積極的におこなわれます。同じレベルで高い品質を求めなければなりません。コスト削減と品質向上は、相反する取り組みとの側面もあります。しかし、コスト削減を求める余り、品質を軽視しては、そもそもコスト削減ではありません。「安かろう悪かろう」な購入品を求めているに過ぎないのです。

2013年に大きな社会問題となった食材偽装問題、また過去の冷凍食品への毒物混入問題でも、その原因を「過度なコスト削減」といった論調が目立ちました。調達購買部門で働くバイヤは、日常的にこのジレンマと対峙(たいじ)しています。価格の品質の対峙(たいじ)とのジレンマに、どのように対処するのかが、調達購買部門における品質問題のテーマです。

●情報収集

調達購買部門における品質確保への取り組みで重要な点は、サプライヤからの購入品であっても、御客様への納入品であっても、その大小にかかわらず、品質問題の情報が調達購買部門で入手できているかどうかです。問題が顕在化して、重大な事態に到って初めて調達購買部門へ「なんとかしてくれ」と情報がもたらされるのは、最悪の事例です。最悪の状況では、すでにバイヤ企業として、サプライヤへの対処で可能な選択肢はかなり限定されてしまいます。購入品に関するサプライヤでの立会い検査や、バイヤ企業での受入れ検査、御客様で発生した問題もふくめて、そういった情報に、調達購買部門からも容易にアクセス可能な仕組みの存在が重要です。そういった仕組みを活用するバイヤの高い感度も必要です。

バイヤ企業がサプライヤからの購入品で品質問題を発見した場合、軽微であっても、2度と発生させない原因究明と再発防止をサプライヤに要求します。これは、サプライヤの営業パーソンと面談の際に申入れします。これは、バイヤ企業内で、調達購買部門が受入れ部門に目が届いているか、受入れ部門とのコミュニケーションがあるかを意味します。

●標準的な対応プロセス

ここでは、昨年夏に発生したファーストフードチェーンでの事例を元に、対応プロセスを確認します。なお、このプロセスは、サプライヤ品質の管理部門にておこなわれます。もし、責任が不明確である場合には、調達購買部門で主導して以下のプロセスを進めます。

<クリックすると、別画面で表示されます>

(1)現状調査

まず、なにがどのように発生しているのかを正確につかみます。調達購買部門で問題解決を主導する場合で、社内に多くの関係者がいる場合は、事実掌握の都度、社内への周知も必要です。品質問題の解決には、社内の関連部門の協力が不可欠であり、正しく関連部門にアクションをとってもらうためにも必要です。

(2)原因調査

事実を掌握したら、次は問題の原因はどこにあったのかを探ります。発生している問題の重要度によっては、(1)~(2)に一定の時間を要する場合もあります。ここで明確にするポイントは、問題を起こしたプロセスだったり、要素(部品や材料)だったりです。

(3)問題分析

上記(2)で明らかにした原因の深掘りをします。よく目にする原因に「確認ミス」「チェックわすれ」といった理由があります。なぜ、確認をミスしたのか。あるいは、なぜチェックを忘れたのか。短絡的に「やむを得ない」としてしまうと、再発させる可能性が高くなります。

(4)解決策立案

再発させないためにはどうするかを、具体的な改善にともなって明確にします。重要度に応じて、(4)が正しくおこなわれているかどうかを調達購買部門でも具体的に文書あるいは訪問して目視で確認して再発防止を確実にします。

どんな品質問題であっても、上記(1)~(4)を経て、初めて再発を抑止できます。上記の(2)原因調査と(3)の問題分析の違いは、(2)は行動で(3)は意識・理解と覚えてください。行動と、意識・理解を分けるのがポイントです。こうなると「ミス」で終わらせられずに、問題の深掘りが必要となるのです。

(つづく)

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい