調達屋のための物流知識~第1回目(坂口孝則)

たぶん一般のひとからすると、物流も調達もひとくくりで、違いなどないと思います。もちろんみなさんは調達に属していらっしゃるので、物流部門のかたはいらっしゃらないでしょう。ただ、調達屋としても、最低限は物流を知っていてもソンはしません。そこで、ここから数回にわけて、「調達屋のための物流知識」を説明します。

まず物流とはなんでしょうか。モノを運ぶことです。そして、その一連の過程をさします。物流とは、細分化すると4つの機能があるとされています。

・包装
・輸送
・保管
・荷役

の4つです。ちなみに、「輸送」と「配送」ですが中長距離を輸送で、短距離を配送と呼びます。覚えておきましょう。

・包装:文字通り、商品を梱包したり、収納したりすることです。
・輸送:ある地点から、ある地点にモノを移動させることです。
・保管:在庫としてモノを管理することです。
・荷役:モノを運搬やしたりピッキング・仕分けしたりすることです。

最近では、これに

・流通加工:アセンブリーを実施して商品に付加価値を与えることです。
・情報提供:サプライチェーン全体のスケジューリングを行ったり、計画を立てたりすることです。

などが加わりました。たとえば、「流通加工」では、商品を小分けにしてパッキングしたり、あるいは商品の修繕などを物流業者(のデポなど)でおこなったりするケースも増えてきました。また、「情報提供」という言葉とともに、TMSなる単語も登場しました。Transport Management Systemの略で、そのまま物流のシステムだと思ってください。これは物流の上流から下流までを統合したシステムで、各物流会社が自社優位性発揮のために客先とともに使用します。

ところで、この物流といったとき、日本で量の動向はどうなっているのでしょうか。みなさんに考えてもらいたいのですが、昨今では、アマゾンなどのネット通販や、ネットスーパーなどがさかんです。私も片棒をかつぐ役目ですが、「物流が世界を変える」といったテーマで特集もよく組まれています。では、量は伸びているのでしょうか。

考えていただえましたか? 結果は減っています。意外だったでしょうか。

国内貨物輸送量は、平成8年(いまから約20年前です)の68億トンをピークに減少しつづけ、現在ではなんと48億トンにすぎません。日本は「失われた20年」などと揶揄されます。実際に、物流量も減り続けた20年でした。ここで調達屋としては仮説を立てましょう。なぜ減ってしまったのか。

頭に置いて欲しいのは、物流としての取扱量はそれだけ減っているのに、GDPはさほど変化していない事実です。だから、経済停滞だけを量減少の要因にはできません。わかりやすい理由には、やはり落とし穴もあるのです。ここでデマンドサイドと、サプライサイドからの理由を考えてみましょう。

デマンドサイドからは、なんといっても、国内生産の減少です。国内でモノを作っていないので、どうしても全体の物量は減ったわけです。しかし、海外収支があればGDPは減りません。これが一つ目。そして、経済がサービス化していくことによって、GDPの構成が非物質に代替されたこと。これが二つ目。最後に、建築資材が大幅にへったことで、商業的な物流が減少したことです。

さらにサプライサイドからは、トラック運転手の慢性的な不足があります。昨年もひどかったのですが、この業界はすぐには改善しません。おそらく、これ以降は、女性・外国人・高齢者・ロボットの活用を考えねばならないでしょう。women/foreigner/senior/robot の頭文字をとって何か造語を考えましたが、いまのところ思いつきません。何か思いついたら教えてください。ただ、それが一つ目。次には、中型免許制度があります。これは<平成19年6月2日から道路交通法の一部が改正され、新たな制度として車両総重量5トン以上11トン未満の自動車等が、中型自動車と定義され、これに対応する免許として中型免許が追加されました。>と警視庁が説明するものです。なぜこれが問題かというと、中卒や高卒で働こうとする若者が、この追加ゆえに働けない事情があります。校長先生たちは、生徒の就職を阻害するものとして、抗議しているようですね。せっかく働こうとする機会を奪っているのですから、検討の余地はあるでしょう。これが二つ目。そして三つ目には、いまは違う傾向ではあるものの、かつての原油高があります。できるだけ運ばないことを考えた結果でもありました。

もちろん、日本ではさほど大型施設が発達しなかったり、用地買収などに問題があったりと、一筋縄ではいきません。ただ、一般的に考えうるのは上記の理由です。

そして、物流の機能にたいして、物流のポイントでわけるのが、次の分類です。

・調達物流:サプライヤから製品・原材料などを購入すること
・社内物流:加工や組み立てなどの生産のこと
・販売物流:お客に商品を輸送すること
・静脈物流:使用後の商品を廃棄のため回収すること

あるいはインバウンド物流と、アウトバウンド物流と呼ぶケースもあります。お客との在庫管理をアウトバウンドと呼び、サプライヤとの在庫管理をインバウンドと呼ぶわけです。

次回以降も、物流の基本についてご説明します。調達屋でも最低限、これだけは知っておきましょう。

(つづく)

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