指標はこれを見ろ!2(牧野直哉)
●第2回 日銀短観(企業短期経済観測調査、以降「短観」と表記します)
前回、短観での読み解きと、私の2014年の見通しが異なっており、私の見通しの真偽(笑)を確かめるための確認ポイントから話を進めます。
今回ご紹介している(1)短観(概要) 2.需給・在庫・価格判断の確認ポイントは、詳細データの積み上げによって算出された大枠でのデータです。全体感を捉えるためには有効なデータです。しかし、読者の皆さんの業種によっては、違和感、もしくは明らかに違う!と感じる方もおられるはずです。前回、私が違和感を感じたのは、次のポイントです。
●生産能力の見通し
●仕入れ価格の見通し
4月発表の数値からは、全体感として
・企業の生産能力には余裕がある
・在庫は増大傾向である
・仕入れ価格の見通しは、大企業と中小企業で先行きに違いが見られる
私は「企業の生産能力には余裕がある」との点に引っかかりました。そして私は以下赤く四角で囲んだ部分から「業種別計数」を参照しました。
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参照した内容は次の通りでした。
●本年3月時点で、需要超過状態
・全規模合計
木材・木製品
自動車
建設
電気・ガス
鉱業・採石業・砂利採取業
いくつかの業種では需要超過状態と読み取れます。こういった業種の皆さんは、調達環境の悪化に対処を余儀なくされているかもしれません。現時点でそういった状況に陥っていなくても、近い将来に備える必要があるのです。この読み解きだけでも、2014年度の調達購買戦略に さまざまな示唆が得られるはずです。例えば、業種別計数に登場する38業種中、需要超過となっているのは全規模合計で5業種です。これは、日本経済が全体的に良くなるような、成長期に見られる経済全体の景気回復はできない、との仮説です。景気とは、いつか良くなるもの、そうではなくなってしまっているかもしれないのです。では、どうするか。同じ業種であっても、採用する戦略によって、業績の良し悪しが決まるのです。
(2)短観(概要) 6.雇用
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ここでは、赤の部分をチェックします。マイナスであれば人材の過剰感が強くなります。今回の結果は、大企業の製造業を除いて、引き続き過剰感が大勢を占めています。しかし「最近」と「先行き」を比較すると、過剰感が薄れています。世の中に目を向ければ、4月はどのような経済環境下にあるでしょうか。消費税が5%から8%にアップして、一時的な落ち込みは避けられないとの見方があります。本来、景況感が落ち込めば、雇用状況は過剰感が増すはずです。しかし、多くの企業では不足感を意識しています。この事実から調達購買部門のバイヤーは、2つの点を意識しなければなりません。
1つめは、バイヤー企業内における人員の長期的な視野に基づいた過不足感の確認です。この「ほんとうの調達・購買・資材理論」でも繰り返し述べているとおり、調達購買部門には従来になかった新たな課題、CSR調達や、企業ブランド逸失の防止といった課題が山積しています。したがって、人員数的な過不足感に加えて、雇用者と社内に必要となる能力、スキルがあるかどうか、量と質の両面での過不足感の確認が必要です。
2つめは、サプライヤー側での人員の不足で発生する問題です。この問題はバイヤー企業に供給能力管理、納期管理で非常に大きな影響をおよぼします。この問題で悩ましいのは、サプライヤーの従業員の数には、バイヤー企業といえども直接的な対策を講じられないとの点です。できるだけ少ない人員で仕事をこなしてゆきたい、そんな希望は、どんな企業であっても同じように持っています。したがって、直接的な問題が発生し、具体的な改善の必要性がないと、なかなか強く申し入れもできません。この場合の解決策としては、これまでに見た需給の見通しや、これからご説明する景況感の判断で、需要が拡大する、景況感が良くなる見通しが出た場合、バイヤ、ー企業としての増産計画をサプライヤーへ提示します。その上で、まずシミュレーションをお願いして、アクションへとつなげます。
(つづく)