一読即決『速さは全てを解決する』(坂口孝則)

新聞の書評欄は役立つ低俗書を無視し、誰が読むのかわからない人文書をひたすら論評しつづけています。その意味で、今回の紹介書も、新聞書評ではさほど取り上げられない種類のものです。「速さは全てを解決する」は、このところ読んだライフハック系のものでも上位に入ります。

タイトルそのままで、一冊まるごと、どうやったら仕事を速くこなせるかに特化したものです。これが意外にバカにできないのですよ。正直、参考になった記述がいくつもありました。私なりにまとめると、著者のテクニックは三つです。

一つ目。メモの技術です。著者はA4白紙に、1分でメモを書けといいます。思いついたこと、なんでも良いのです。それを1枚にまとめ、できれば一日10枚書く。そうすると一日10分しかかかりませんが、異常なほど頭の良い人間になれるといいます。しかも、A4で思考をまとめるだけでパワーポイントの資料作成も高速化していきます。具体的なメモの書き方は本書に譲りますが、文字通り、思いついたことを書くだけです。書く行為そのものが重要です。悩みもストレスもなくなり、なにより仕事が速くなることそのものが頭脳に好循環をもたらすと著者は主張します。

二つ目。パソコンの効率化です。いまさらかもしれません。でも「よろしくお願いします」とかって、一字ずつ書いているひとがいまだにいますよね。これは「よろ」とかで登録しておくのです。それを数百単語登録すれば、相当な効率化になると。たしかにその主張は私(坂口)も「モチベーションで仕事はできない」で行いました。しかし、この著者は徹底しており、メールの返信文例も、かつて自分が受信したものからすぐれた型をコピペしておけといいます。これも無数に持っていれば、立ち止まって考えることがない、と。笑ってしまいました。さらに仕事でまわってきた資料のうち、かっこよく使えそうなものがあれば、再利用ボックスに保管するとのことです。つまり、ゼロから考えるのではなく、先人たちの知恵を借りるわけですね。徹底した姿勢が参考になります。

三つ目。コミュニケーションに関する勇気をもつことです。著者は「じっくり考えても意味がない。メールは言いづらいことも、ズバっと返信してしまったほうがよい。いや、早い返信こそが優しさだ(大意)」と述べます。これはそうかもしれない、と思いました。堀江貴文さんも、かつてはメールを、即答と無視、保留にわけろと勧めていました。たしかに、どうせ返信するならば早いほうがよいですよね。だって、ヘンに考えて「マシ」になったケースはほとんどありません。

なお、本書に先立って、著者が「ゼロ秒思考」も発売しています。が、私は断然「速さは全てを解決する」を勧めます。というのも、ゼロ秒は、メモ書きしか説明していないのにたいして、速さは、メモをふくめたトータルな仕事術を紹介しているからです。ぜひご一読ください。

(了)

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