ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●5-6購入業務そのものを外部に任せる ~社外リソースの活用方法~

今回は購買業務そのものを外部に任せるケースを考えます。外部への業務委託は、事前の費用対効果の確認が不可欠です。具体的な外部への委託方法も、範囲や内容によって、いろいろな委託方法が想定されます。「委託」といっても、購買プロセスの多くを、外部BPO(Business Process Outsourcing)サプライヤに委託する場合もあれば、ほんの一部分、例えば書類の保管や、注文書の発送業務のみを外部へ移管する場合とさまざまです。仕事量ばかりが増えて、調達購買部門メンバーの残業が増えて困っているといったケースでも、その一部の負荷を、部分的に外部リソースを活用して、社内の負荷の軽減が可能です。

外部リソースの活用を検討する場合、社内で発生している残業によるコストと、外部委託に伴って発生する費用との対比で、費用対効果を判断します。これには、2つの大きな目的があります。

1つめは、従来社内リソースを使っておこなっていた業務の持つ「意味」の再確認です。社内でおこなわれていた業務ですから、意味の有無や重要度よりも「やってあたりまえ」と考えているはずです。しかし、アウトソーシングの検討では「あたりまえ」の見直しが不可欠です。でも「あたりまえ」にやっていた業務の見直しは難しいのが実情です。そこで、あらかじめ社内にある「情報」を元に、業務の持つ意味合いを考えてみます。「社内にある情報」とは、次の2つです。

(1)企業戦略(事業戦略)
(2)競合他社対比での自社の優位性の源泉

上記2点を踏まえて、業務の意味合いを考えます。調達購買部門における業務でアウトソーシングできない業務はありません。調達購買部門の業務は、アウトソーシング会社の選定だけになるかもしれません。アウトソーシングを語る文献には「アウトソーシング対象となり得る業務機能」として、調達購買に関連するこんな業務が例示されています。

・原材料/供給品の調達
・製品物流/倉庫/輸送
・媒体購買/計画立案
・購買/調達
・ロジスティクス管理
・サプライチェーンマネジメント

調達購買分野では、そのものズバリでアウトソーシング可能と位置づけられています。一般的な調達購買の現場を想像すると、ほぼ全員の仕事をアウトソーシングできるのです。これは「だから、調達購買部門を無くせばよい」と言いたいのではありません。必要かどうかを判断する場合、現在社内でおこなわれているのであれば、すべてが必要との判断になります。これでは、外部リソースの活用などできません。したがって、できるだけアウトソーシングできない業務とせず、すべての業務を対象にして検討が必要です。

2つめは、社内リソースでおこなっていた業務の「コスト」と「品質」の「見える化」の実現です。

社内業務を外部に委託する場合は、業務内容と要求品質の文書化が必要です。もっとも注意が必要なのが、社内でおこなう業務と外部に委託する業務の円滑な引き継ぎです。実際に外部委託を実現した際に、内部から外部、あるいは外部から内部への引き継ぎで滞りを生まないためにはどうするか。これは、アウトソーシング会社と従来社内でおこなっていた部門が、外部化する業務について共通認識を持たなければなりません。また、外部化する業務の前後工程に対しても、円滑な業務プロセスの設定をおこないます。これらを、文書化して「見える化」の実現が、効果的なアウトソーシングには必須です。

また、業務内容に関連して発生していたコストの把握も必要です。社内の実行とアウトソーシングした際の発生費用を公正な視点で比較検討するためにも、できるだけ詳細なレベルでのコストを調査します。アウトソーシングでは、発生する労務費だけがフォーカスされますが、関連して発生する光熱費やオフィスコストといった細かい部分まで集計します。その上で、アウトソーシング会社から提示される費用との比較をおこなって、実現の可否を判断します。調達購買業務の中では、次の2つの一般的なアウトソーシング可能業務が存在します。

☆間接購買を外部へ任せる

文房具や、オフィス用の家具、生産現場の工具といった間接購買では、多くの外部企業によるサービスが存在します。調達購買部門は、カタログの配布や、購入方法について社内へ連絡します。一定期間の購入実績データを入手、分析して、より安価で効率的なサービスの選定を行います。

☆試作品の購買を外部へ任せる

製造業では、試作用の部品あるいは製品を購入する場合があります。数量は少なく、少しずつ異なる仕様で、多くの種類の部品や製品を購入しなければなりません。また、試作用で一番難しいのが、短納期対応です。まさに試行錯誤の過程で必要になるため、量産や販売用と合わせ、サプライヤへ頼み込んで対応して貰う場合が多くなります。

そんなとき、少ない数量から、短納期で納入を実現するサプライヤも存在します。一般のサプライヤでは難しい対応を行うため、購入価格は比較的高額になります。そして、製品としての耐久面を保証しないなど、特別な条件も付加されます。しかし、試作品と割り切って納期優先で採用すれば、自社の円滑な製品開発に貢献できます。仕様が固まって、製品化が完了した後は、確定した仕様で改めてサプライヤを選定します。

(つづく)

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