ケーススタディ活用方法 2(牧野直哉)
前回に引き続き第2回目。今回は、実際にケーススタディ(以下「ケース」表記します)を目の前にした取り組み方法について考えてみます。
購買ネットワーク会でこれまで行なわれたケースでは、私を含めたケースの作成者が、製造業の直接財購買のキャリアを持つバイヤーばかりです。したがって、ケースで扱われる題材も、製造業の直接財が多くなります。
一方、購買ネットワーク会に参加される方は、製造業バイヤーだけではありません。また間接材バイヤーの方もおられます。同じ製造業でも品目が異なり、ケースで扱われる題材にまったく親近感を感じられない場合も多くあります。
しかし、まったく親近感を感じない、知らない製品や業界のケースだからこそ、既成概念にとらわれない発想ができます。また取り扱うテーマは、発注先選定、バイヤー教育、サプライヤーマネジメントといった、バイヤーにとっては普遍的なテーマです。知らない業界、製品だからこそ好き勝手に、あるいは自分の経験をベースにした最適な対処方法を述べる必要があるのです。
ケースで絶対的に重要なポイント。それは間違い/不正解が存在しない点です。そもそもビジネスの世界は、従来の常識を打破するイノベーションによって進化を遂げたのです。机上の検討なのですから、かえって突飛な発想の積み重ねをやってみるのも間違いではありません。ただ、突飛すぎると関係者にどうやって理解を得るかを考えなければなりません。しかし、ケースに取り組む場合は、なにかに壁をつくることなく思考は自由奔放であるほどに、ユニークなアイデアが生まれるのです。
また、同じケース(情報)を囲んで、数人でディスカッションするのも、参加者の異なった考えが、お互いを刺激して、新しくより最適解を求めるヒントとなるためです。また、自分が業務で直面している問題に、似た背景・環境の中で直接的に答えをもたらすようなケースには、なかなか出会う機会も少ないでしょう。これは、ケースに取り組む際にぶつかる「制約」の一つです。
実際にケースをやってみると、多く寄せられる感想に「情報が少ない」「条件設定が不明確」といった内容があります。しかし、実際に我々が直面するビジネスの様々な困難な状況において、意志決定をするために必要な情報はすべて不足なく揃っているかどうか。すべて必要な情報は入手した上での意志決定がどれほどあるのでしょう。なにもかもわからない状況はないけど、大抵はどっかが想定したり周辺状況から仮説を構築したりするはずです。おなじプロセスをケースの回答を導き出す場面でも行なってみるのです。
(了)