ケーススタディ活用方法 1(牧野直哉)
9月に開催される関東購買ネットワーク会で、プログラムの1つであるケーススタディを担当します。これまでにも何回かケーススタディを作成しました。初めてケーススタディを作成した時は、いったいどうやって内容を構成すれば良いのか。まったく手法がわからないまま、手探りで作成しました。しかし、何度かこういった機会を得るうちに、ケーススタディの面白さ、奥深さに魅了されています。
ケーススタディ(以下、ケースと表記)には、2つの活用の方向性があります。今回はケーススタディの作成について述べ、次回はケーススタディへの取り組みをお話したいと思います。
今回のテーマは「サプライヤーマネジメント」です。調達購買業務のなかでも、私自身のライフワークと位置づけるテーマです。従来も同じようにサプライヤーマネジメントをテーマにしたケースを作成してきました。過去はいずれもサプライヤーとの関係の強化をどのようにおこなうかをテーマにしました。具体的には、取引先協力会の運営方法、そしてサプライヤーミーティングの運営といった内容です。
ケースを作成する際は、まず自分の問題意識をテーマとして設定します。今回作成したケースでは「サプライヤーとの関係の終わらせ方」です。そして、基本的には自分のこれまでの実務での経験をベースに、まず基点となる条件を設定します。条件設定に際しては、文章と数値の説明の両方を準備します。これは、実際の業務を想定しています。例えば、サプライヤーマネジメントでは、発注金額やサプライヤーの評価結果は数値で表現します。
ケーススタディといえば、ハーバードビジネススクールを筆頭にしたMBA(経営学修士)を取得する際に行なわれます。インターネットを活用すれば、様々なケースの入手が可能です(この記事を作成時点で、様々な分野で2万件以上のケースが購入可能)。調達購買分野のケースが多いであろうSupply chain関連でも約1200件のケースを入手可能です。もしご興味があれば、こちらのページからアクセスしてみてください。
ケースを作成する際の注意点は、問題意識をそのままの形でケースの中に表現しないに尽きます。「○○○○○をどうしますか」といった、問題をそのまま投げ出すような形でのケースにはしません。そういった形では、単に「質問」になってしまいます。そういった形にならないための行なっているのが、ケース作成が終了してすぐに作成するケースの解説です。
ケースの「解説」を作成する目的は、自分の問題意識をそのままにせず、答えを導き出す点です。ケースには、どんな問題があるのか。例えば今回作成したケースにしても、大きなテーマはサプライヤーマネジメントであり「サプライヤーをどう減らすか」です。しかしテーマとなるからには、とても大きな問題です。大きな問題とは、小さな問題や課題が複合的に絡み合って大きくなっています。一般的に「経営の4資源~ひと・もの・かね・情報」と言われますが、少なくともケースには経営の4資源にまつわる4つの問題は内包されているのです。ケースを作成し、ケースの解説を作成するのは、問題の細分化や、問題解決法の探索のトレーニングにピッタリなのです。
<つづく>