教養としてのサプライチェーン第3回目(坂口孝則)

*前々回から数回にわたり、「教養としてのサプライチェーン」解説を実施していす。サプライチェーン全体像と近年のトピックをとりあげます。この連載をすべて何かに貼り付けていただければ、そのまま新人教育に使えるようなものを目指します。

今回は、調達・購買の続きです。サプライチェーンのなかの発注業務についてお話します。

・有名な発注方式

代表的な発注方式は二つです。

①定量発注方式
②定期発注方式

①:在庫が一定量以上減ったら自動的に決められた分を補充する発注方法。
②:定期的に、その都度適切な数量を補充する発注方法。安全在庫量、標準調達期間中の消費数量、現在の在庫量、引当数を計算し、最適な発注数量を決定する。

いわゆる教科書的な説明では、①は安価で消費数が安定しているもの部材に使います。また、②は高額部品など、在庫最小化すべきもの、あるいは調達リードタイムの長い部材に使います。

よく例示されるのは①であればボルト・ナットです。これはバケツにボルト・ナットを入れておき、バケツの内側に赤い線をひいておきます。生産現場で、その赤い線以下になったら、自動的に発注するイメージです。では、その場合、内側の赤い線はどの高さ(どの数量)に引くべきでしょうか。それには計算式があります。

定量発注方式の発注点と発注量計算

・発注点:標準調達期間中の消費数量+安全在庫量
・経済的発注量: 

で表現されます。

次に②に関して、よく例示されるのは、カスタム品です。サプライヤにとってカスタム品は受注生産品ですから在庫をもっていません。場合によっては材料調達からはじめますから、リードタイムが長くなります。かといって高額品であれば、むやみに多量発注するわけにもいきません。そこで、定期的には発注するものの、ムダなくかつ不足なく発注する必要があります。

定期発注方式の発注量計算

発注量:標準調達期間中の消費数量+安全在庫量-現在の在庫量+引当数

<参考~不明の場合の単語説明>
*お分かりになる方は飛ばしてください

①定量発注方式の各単語について
(1) 発注点:発注するタイミングを知らせる在庫量です。この点を切った瞬間に発注することになります。
(2) 標準調達期間中の消費数量:発注してから製品が納入されるまでに使ってしまう数量のことです。
(3) 安全在庫量:安全を見て確保しておく余剰在庫です。
(4) 経済的発注量:総費用を最小化できる発注数のことです。
(5) 1回の発注コスト:1回発注するためにどれだけの費用が発生するか。たいていは適当に計算されます。時間労働単価3,000円の社員が1時間で100枚の注文書を発行できるから、1回の発注コストは30円だ、とか。もちろん、発注の自動化が進んでいるところであれば限りなくゼロに近づきます。
(6) 年間在庫管理費用率:その製品を管理するために必要な費用割合です。これもあまり厳密に計算できません。「100円の製品だったら、5円くらいは管理費用がかかっているかなぁ」などと5%に設定されます。

② 定期発注方式の単語について
(1) 引当数:すでに消費することが確定している在庫の必要数です。

・発注計算は使われているか

これが有名な二つの発注方式です。私は以前から著作で、これらの発注方式を教養として(というか常識として)知っておくべきだ、と書くと同時に、ほぼ現在ではERP(Enterprise Resource Planning)が計算してくれているだろう、とも書きました。

そこから私の考えは、微妙に変化しました。というのは、「たしかに教養としては知っておかねばならない」ものの、「実際は、定期発注方式の計算式を使うケースはほとんどない」ことです。私が知る限り、定期発注方式をそのまま使っている企業はありません(あるなら興味深いので教えてください)。これまでのデータをもとに、標準的な消費量をベースに発注数量を決定するケースは少なくなったようです。

現在は、将来の精緻な生産計画数量と紐付け、より現実的な発注数量を決めています。これは、発注システムが独立したものではなく、営業・生産・物流・調達といったものが一気通貫に管理されるようになったためでもあります。

いっぽうで、企業によっては「在庫品」などと名称がなされる部材にたいして、定量発注方式は使われるケースが多いようです。規定数量以下になった際に自動発注がなされます。ただ、この計算方式をそのまま使っているケースもあれば、将来の必要数量をよりシビアにみたうえで発注数量を規定するケースもあります(となると、定「量」発注方式とはもはやいえない気がします)。それだけ企業の在庫に対する考えかたは、よりいっそう厳しくなっているようです。

次回は納期調整についてお話します。

<つづく>

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