勉強会のススメ(牧野直哉)

今回は引き続き、身近な勉強会の「開催テーマ」について、述べることにします。

(3)他部門業務の説明会

メルマガの誌上では何度も申し上げていますが、企業における「買う」とは、個人のそれと異なります。「買う」のに必要な意志決定は、社内の関連部門に分散され、各部署にて実行されます。仕様決定は要求部門で、手配要否は生産管理部門、サプライヤーへの支払いは経理部門といった形です。さて、ここで皆さんへ質問です。関連部門の業務内容について、詳細を理解されていますか。

たとえば、調達・購買部門に期待されるコスト削減。コスト削減の基準は、原価計算の仕組みが密接に関係して算出し決定されます。調達購買部門の判断で、たとえば見積金額対比で決定金額との差額がコスト削減として認定されるケースは稀です。

したがい、自社でどのような原価計算の仕組みを持っているのかを知っておくことは、調達購買部門の業績評価にとって必要なことであり、とても重要なことです。原価計算や経理の一般的な知識は、文献によって習得が可能です。しかし、文献に記載されたセオリーが自社でどのような形で実践されているのかは、しっかりとした理解をする必要があるわけです。

(4)今日的テーマ(社内、社外)の調査、説明

最近、私がおこなった勉強会のテーマに、「円高のメリットを探せ!」があります。マスコミの伝えるところでは「円高が日本を滅ぼしかねない勢い」です。しかし、あくまでも為替レートです。そして、様々な原材料や資源を輸入に頼る日本にとって、ほんとうに円高で日本が滅ぼされてしまうのかどうか。とても身近な疑問です。

そこで、普段おこなっているコスト分析に次の様な視点を加えました。コスト構成の中に、外貨で発生している要素を探し、自社の購入コストにどのような影響を与えているかを類推するものです。バイヤー3名にそれぞれ自分が購入している製品について分析をしてもらったところ、かなり興味深い結果が得られました。円高のメリットの追求が、サプライヤーの原材料の購入方法の解明に繋がり、新たなコスト削減を実現したのです。

今日的な話題を、自分たちの業務と結びつけておこなう勉強会には、一つ大きなメリットが存在します。世の中に同じ興味を持っている人が多く、ホームページやブログで入手できる情報が格段に多くなるのです。もちろん、なかには根拠のない情報も含まれています。わずか3人でおこなう分析でも、同じ内容にまったく異なる見解が提示されたりするわけです。どちらも一理ある場合もあれば、どちらにも無理があることもあります。ポイントは、あくまでも社内の勉強会ですから、各自の調査内容が正しいかどうかにあまり固執しなくても良いのです。どちらかといえば、結果でなくプロセスに重点を置いて、間違った場合は、全員で勉強会が終わった時に正しい理解を得ることができていればいいわけです。

このテーマでは、タイミングも重要な要素になります。旬を逃さないことも、勉強会の盛り上がりの一要素になるのです。

(5) 読書会

これは、なにか本を一冊選んで、一読後に実施するものです。日本の平均的な給与所得者は、月に一冊すら読書をおこなっていません。したがい、月に一冊でも読書会をキーにして本を読むことができれば、その他大勢のサラリーマンと違った経験を得ることができるわけです。

一読後におこなう内容としては、次の様なものです。

1) 内容をA4一枚にまとめる

2004年にこのような本( http://amzn.to/NRqOK7 )が話題を集めました。その後に、いわゆる「A4本」は様々な形式で書かれています。この取り組みを勉強会でおこなった目的は、本を読むことを最終プロセスにしないことです。本を読む=入力でなく、A4一枚にまとめる=出力・アウトプットをゴールにすることで、本を読むことへの心理的なハードルを低くする狙いがあります。

また、一冊の本を約10万字(原稿用紙250枚)とします。A4一枚とは、マイクロソフトのワードで、デフォルトの設定では40字×36行=1440字です。割合に換算すると、1.44%になります。いわゆる「まとめ力」「サマリー力」といったトレーニングにもなります。もっとも、この程度だと前書きと後書きでサマリーを作ることも可能なので、サマリーを発表して質疑の時間を設けることも重要です。


2) 興味深いポイントを3つあげ、なぜそう思ったのかを説明する
(興味深いとは、良くも悪くも印象に残ったこと)

先の「A4一枚」に比べると、一見ハードルが低そうに感じられるかもしれません。しかし、文書を用いることなく、口頭で説明するのも、別の難しさがあります。

いずれのケースも、本を読むことの先にマイルストーンを設定することがポイントです。読者の皆さんの同僚だと、調達購買関係者が多いのでしょうか。このメルマガの共著者である坂口孝則さんの「牛丼一杯の儲けは9円―「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学 http://amzn.to/RRffUi 」は、同僚とおこなう勉強会での読書会には格好の文献と思います。そして、別に調達購買に関連する本でなくてもいいわけです。たとえば、こういったことが話題になることは悲しむべき事ではありますが、「入門 いじめ対策―小・中・高のいじめ事例から自殺予防まで http://amzn.to/RRgFOD」というような本でもかまわないと思います。大人でも小中学生でも、人間関係の根源に根ざすシンプルな価値観の部分は同じです。また、勤務先の仕事って、人間関係が良ければ、少なくとも会社に行くのが嫌になることはありませんよね。いじめは、まず人間関係がおかしくなって、結果人と人の間に現れます。であるならば、会社での人間関係悩む人に、このような本は必ず参考になる、学ぶべき点があるはずなのです。

月一回程度、定期的に読書会を設定して、主催者たる読者のあなた以外から、課題本の提案があったら、主催した勉強会はまず成功です。さぁ、やってみませんか?

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい