坂口孝則の「超」調達日記(坂口孝則)

■9月X日(月)■

・某社で講演。昼過ぎから湘南新宿ラインで移動。少人数かな、と思っていたら、50名ほどが集まっていただいた。タイトルは「提案営業力向上セミナー」。調達・購買の私がやるのもどうかと思うが(笑)。調達・購買から見たすぐれた営業のありかたについて90分ほど話す。意図的に過激な内容にしていたところ、好評だったらしい。調達・購買部門の方もお越しいただいていたので、調達・購買部門に対する辛辣さを不快に思われるのではないかと思っていた。しかし、調達・購買部門の方からも好評だったようだ。

・ということで、私に講演依頼なさるなら今がチャンスです。

・夕方に帰社し、原稿を書く。基本的に「忙しい」とは言わないけれど、最近はめっぽう忙しい。どうしたことだろう。読書の時間がない。実用書やビジネス書は、それでも仕事の関係で読むけれど、小説を読む機会が減ってしまった。最近では、樋口毅宏さんという小説家を注目している。この日は、最新刊の「二十五の瞳」を読む予定だったけれど2章までしか読めなかった。樋口さんの最大傑作は「民宿雪国」と「日本のセックス」だと思う。特に前者を読んだときの衝撃は忘れられない。こんな小説家が日本にも登場したのかと驚いた。ああ、読書の時間はいつ取れるだろうか。

・原稿を出版社に送ったら、23時になっていた。ビールを飲んで寝る

■9月X日(火)■

・長野県に移動。これも講演のため。新宿からあずさに乗り込む。某仕事関係者と乗り込んだため、新宿から諏訪までの道中は打ち合わせに費やす。読書の時間は取れないようだ。そして岡谷に到着。あまりにがらんとした駅で、昼食の場所を探すのにも苦労。

・会場は大ホール。満員。長野県じゅうの方々が集まってくれたらしい。長野県の商工会議所が主催だから、ギャラは安かったけれど……。大人数の前で話すのは面白い。とはいえ、ぼくは人前で話すのが苦手だ。この日も、すごく評判が良かったらしく、次の企画もお願いされた。ただ、それでも、自分の講演力は、まったく未熟だと思っている。というか、すべてのことに自信がない。たまに、プレゼンや講演について自信満々に語っているひとがいるけれど、そのひとのプレゼンや講演を聞くと、たいてい面白くない。きっと、自信があることで、それ以上の改善をしなくなるためだろう。

・講演後に多くの人と名刺交換をして、帰路につく。ビールを飲んだら酔っ払ってしまった。疲れているのかもしれない。それにしても、次は週刊誌の原稿を書かねばならない。どうなっているのだろう。よく「ネタがよくありますね」とおっしゃるひとがいる。運良くネタに困ったことはない。というのも、ぼくは恒常的なネタ不足だからだ。逆説的に思うかもしれない。ただ、ネタをたくさん持っているから、「ネタ切れ」になるのだ。いつもネタを持っていなければ、ネタ不足にはならない。常に、ネタを探して、都度、書いていく。多くの人は、ネタを備蓄してから書こうとする。それだと、いつか行き詰る。だから、あらかじめネタを持っていないほうが良い。これがぼくの持論だけれど、マネしようとするひとは少ない。

■9月X日(水)■

・朝からTBSにいく。番組の打ち合わせ。といっても、雑談みたいな打ち合わせ。スタッフ6人に囲まれて、ああだこうだ話をする。テレビスタッフは、つねに徹夜を繰り返している。大変だなあ……。忙しいなんていってられないなあ……。と思う。テレビの番組スタッフは、12時間連続会議!なんてのをやって、面白い番組企画を練っている。数千万円が動くビジネスであれば、その程度は当然だというわけだ。

・打ち合わせの終了後、番組出演依頼がある。関東ローカルの番組。翌週末に収録のようだ。一息つく間もなく、帰社して接客。

・その後、神戸に向かう。翌日から、二日連続の集合研修の講師を担っていたためだ。新幹線の席がなく、グリーン車に乗る

関西、とくに兵庫県に行くと、つねに昔の思い出がフラッシュバックする。仕事のこと、彼女のこと、人間関係のこと。あのときぼくはなぜあのひとを助けてあげられなかったのだろうか。なぜあのときあんなひどいことを言ってしまったのだろうか。裏切り。失望。失意。絶望。自分がもうちょっとうまくやれば、あのひとは死なずに死んだのではないか……。もろもろ。もちろん、楽しかった思い出もあるけれど。

・と感傷に浸っている場合ではない。ぼくは、冥福もあの世も信じない。誰かが死んでしまったら、残されたひとができることは、せめて、そのひとの意思を継ぐことぐらいだろう。そのために、生きるしかない。ああ、また暗くなってしまった。

■9月X日(木)■

・朝から研修講師。さすがに9時間立ち続けるのはしんどいね。懇親会のあと、すぐにホテルに直行。ホテルで、持参していた「すごプレ」を鑑賞。わはは、これ凄いね。凄すぎる。知人から薦められて買ったんだけれど、パワーポイントの極限を目論むというもの。「こんなのがパワーポイントで作成できるのか?」と驚愕するものばかり。みなさんも、お時間あれば一読を。

・ホテルで翌日の予習をして寝る。

■9月X日(金)■

この日も朝から9時間立ちっぱなしで講義。二日連続だと、相当しんどい。でも、講師が疲れていたらどうしようもない。真剣にやった。100%の知識を受講生のみなさんに伝えるつもりで。

・受講生のかた数名からfacebook友達申請がきた。なるほど、いまはfacebookが新たなコミュニケーションの形として成立しているのね。もちろん、すべて承認。

・講義後の軽い食事会のあと、東京へ帰る。新幹線のなかですごプレ」の続きを鑑賞。神業といってもいいくらいのプレゼンテーションだ。そこで、「神業」について考えた。ひとはよく、神業という。しかし、結局のところ、神業とは人間業にすぎない。毎日1%ずつでも進化していけば、それが積もれば、神業と呼ばれるようになる。ぼくたちは、短期間で成果を求めがちだ。しかし、短期間でできることはすくない。数年単位で考える必要がある。

・ぼくの心の師は「プロになるためには10000時間が必要」といっていた。毎日3時間の訓練をしたとして、1年間で1000時間。10年経つとプロになれる。毎日10時間の練習を重ねたら、3年でプロになれる。なるほど、石の上にも3年とはよくいったものだ。毎日仕事を10時間やれば、3年後にはプロになっているというわけだ。

・しかし、それは本業の話。もし、本業以外で技を磨こうと思えば、追加で10000時間が必要になる。ぼくは執筆でお金をもらっている。考えるに、ほぼ10000時間を練習に費やした。これは一つの基準になるのではないかと思う。あまりオヤジくさいことはいいたくない。でも、ラクして稼げることなんて、結局はすぐに思ってしまうのだから、10000時間をかけてしっかりと基礎体力づくりをしてはどうか、と若い人にはいっておく。

・23時に帰宅。来週もがんばろっと。

<つづく、かもしれない>

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