坂口孝則の「超」調達日記(坂口孝則)

■8月X日(月)■

・夜に食事をしていると、某知人女性から、離婚相談を受けた……。離婚は止めたほうがいいのではないかな、というくらいしか俺はいえない。というのも、他者を変えることは難しい。変わるのは自分だけだから。夫のせいにして離婚しても、結局は繰り返すことになるんじゃないかなあ……と思う。だからといって、このままで状況は好転するのか? もちろん、しないだろう。自分を変えていくしかない。

・ぼく(「俺」「ぼく」「私」の混在中)の好きな言葉は、「ダメならば違うことをやれ、なんでもいいから」だ。同じように生活していれば、たしかに何も変わらない。結果も同じことが多い。ダメを繰り返す。しかし、だからこそ、何か違うことをやるしかない。たとえば夫婦喧嘩が同じパターンにはなっていないか? 同じ内容で言い争いしていないか。こちらから謝ることはできないか。譲歩することはできないだろうか。または(馬鹿らしいとはいわずに)花を買って帰ることはできないだろうか。きっと、これらのことを「何をいまさら」というひともいるだろう。でも、このようなささやかな変化からしか、大きな変化をもたらすことはできないだろう。

・それにしても、バツ3(離婚歴3回)のひとって体力あるよな……。あれだけ繰り返す気力が凄い。ところで、結婚について考えるには、極端な本が面白い。「崖っぷち高齢独身者」「婚活したらすごかった」が良い。とくに前者は、かつて私が知人たちと読書会を開いてしまったほどだ。あまりの極論の多さに、既婚者・独身者とわず盛り上がってしまった。身近なひとたちと読書会をするのであれば「崖っぷち高齢独身者」を推す。

■8月X日(火)■

若いビジネスマンだったころ、二つの言説に戸惑った。成功者のコメントで「本を読めば成功できる」というひとと、「本なんか読まないで行動すればいい」というひとがいたからだ。混乱した。おそらく、前者は自信がなく、後者は本など読まずとも行動すればいいという自信家なのだろう。私の結論は、凡人ならば前者になったほうが良いということだった。そこから無数の本を読み漁ってきた。

・ところで、単に本さえ読めばいいのだろうか。私が見るに、さらに差別化しようとすれば2000~3000円以上の価格の本を読めばいいということだった。読者数が限られている内容(=ニッチな内容)は発行部数が少なくならざるを得ず、そのぶん価格が高くなる。しかし、差別化の要因はニッチであることだから、そう考えれば高額な本を買ったほうが良い。とはいえ、新人サラリーマンが2000~3000円の本を毎月10冊くらい買うのは財政的に厳しい。しかし、買うのだ、と自分に言い聞かせてきた。

・数年前に購入した「ビジネス統計学【上】」「ビジネス統計学【下】」をこのところ読み返している。なんと傑作! くだらないビジネス書の100冊分くらいにあたるのではないか。残念ながら、5年前はこの本の凄さを私はわからなかった。しかし、本の価格というのはさまざまなことを示す。高いほど良書が多いのだなあ。よし、高い本をこれからも躊躇せずに買おう! と宣言した(誰に?)。

・とこの日も2万円相当の書籍をamazonで購入……。読めるのだろうか。

■8月X日(水)■

一日じゅう資料作成に没頭する。最近は、JAZZとトランス、ドラムンベースを繰り返し聞いている。たまにサザンオールスターズを聞くと、日本語が凄すぎて、資料作成できない。やっぱり、「勝手にシンドバッド」の「胸騒ぎの腰つき」って異常な日本語だ。もちろん、褒め言葉。「胸騒ぎ残しつつ」が変形したのではないかと思う。語呂があっていても、意味をなさず、それでいて印象に強烈に残る……。桑田佳祐さんは天才だと思うしだいだ。

・ところで、桑田佳祐さんといえば、「ロックの子」「クワタとユーミン」が有名ではあるものの、一冊だけ読むとすれば「ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」が面白い。これだけ自分の仕事に集中して、妥協を許さないとすれば、そりゃ成功するだろうと思ってしまう。その意味では、天才ではなく、努力の人だ。徹底的に細部にこだわり、愚直につづけること。これが私たちにもっとも足りない要素なんだよね。あらためて感心した。

・とそんなことを考えている場合ではない。翌週からは「地獄のロード(収録1日、講演1日、コンサルティング最終報告2日、営業1日)」がはじまるのだ。準備をしなければいけない。世の中は、お盆休みですか……。私は無関係に仕事を重ねるだけ。

■8月X日(木)■

・この日も広島。出発前に自宅の部屋を見ていると、本が重すぎて本棚が崩れている(壊れている)。毎日毎日、飽きもせずに無数の本を買っている。そして多くを電子データ化したのだけれど、それでもダメ。よくみると、床もヘコみすぎている。どうしたものか……。考えた結果、あきらめた。

・さて、この出張のなか、「あなたの本を電子書籍化しませんか?」というメールが届く。「本」ではなく「ご本」ではないか、などというツッコミは抜きにしておこう。ぼくの「営業と詐欺のあいだ」を電子書籍化したいという。実はこの本、地味にずっと売れている。ただ、問題は、ぼくがすでに版元の幻冬舎と電子書籍契約を結んでいることだ。それと、根本的な問題は、著者が最終データを持っていないことにある。これはぼくだけの問題ではない。ほとんどの著者は本になった最終データを持っていないのだ。ゲラは紙で届き、それを赤ペンで校正する。しかも、最終的にプロの校正者も赤入れする。本になったときには、自分の原稿が変わっていることがほとんどだ。そのなかの修正のいくつかは大きなもので、元原稿のまま本にすることはできない。

・この根本問題をクリアできなければ、既存本は既存出版社からの電子化になるだろう。この事情がわかっていないひとが多い。また、もう一つ問題をあえて述べると、既存本を電子化してもほとんど売れない。「もしドラ」「高田純次の適当日記」を例外とするならば、紙の本の1%も売れないのだ。ぼくが「1円家電のカラクリ0円・iPhoneの正体」を電子化したとき、幻冬舎のなかで一番売れた。しかし、その売り上げ数はたったの100部だった!! 販売価格を500円とし、印税を50円とすると、5000円にしかならない! だから、オリジナル商品を書き上げるしかない。「未来調達研究所」はその方針でやっている。紙で買えるものを、単純に電子化してもダメだ。

・話を戻そう。広島でのコンサルティングは大詰め。ただ、成果は見えてきた。先方からは来年の取り組みテーマについて相談がある。このような人間(俺のことです)でも役立つ領域があってよかった。

■8月X日(金)■

・終盤になったオリンピックの報道が笑える。アスリートにたいするインタビュアーの質問が酷い。「やりましたね!!」(これが質問か?)、「この喜びを誰に伝えたいですか?」(小学生か、お前は)、「表彰台では何を考えていましたか?」(どんな答えを期待しているんだ)。

・とはいえ、昨今の「日本のメディアはダメだ」論にぼくはあまり賛成できない。日本人知識層はかつてより、「進んだ欧米」vs「遅れた日本」という紋切り型の構図ですべてを説明しようとしてきた。しかし、ほんとうか? アメリカのFOXニュースのほうが明らかに偏向しているように俺には感じる。アメリカの記者クラブだって相当の問題があるはずだろう。それに、世界各国のメディアは自国選手よりの報道を続け、日本の状況とさほど変わらない。だから、けっして「進んだ欧米」vs「遅れた日本」ではない。世界各国のメディア全体を笑うような余裕が不可欠だと思う。

・それにしても、せっかくのオリンピックなんだから、ボルト選手以外の外国人選手についても詳しく報じてほしかったな……。技術と戦略をもっと知りたい。オリンピックは感動と人間ドラマだけではないはずなのだから。逆にいえば、専門誌の生き残り策は、そこにあるはずだ。残念ながら、スポーツ新聞もテレビと同じような報道ばかりだったけれど……。

・次の4年後、みなさんはどこで何をしているだろうか。そんなことを考えて人生計画を立ててみるのも悪くはない。

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