「夏休み子ども科学電話相談」に学ぶバイヤー(牧野直哉)

「夏休み子ども科学電話相談」というラジオ番組知っていますか。NHKラジオ第一放送で、7,8月限定で放送される番組です。ホームページの「保護者の皆さんへ」には、次のようなことが書かれています。

夏休み子ども科学電話相談」は、小中学生のみなさんの科学に対する疑問や興味にこたえる番組です。りっぱな(?)質問でなくてもかまいません。ふと、頭に浮かんだ謎、素朴な質問でも大丈夫です。夏休みの午前中、ぜひお子さんとご一緒に番組をお楽しみください。

様々な分野の先生方が、子供たちの「ふと頭に浮かんだ」「素朴な」質問に答える内容の番組です。

「金魚の鼻にはどういう役割があるのか?」

「桃を触るとチクチクするのはなぜ?」

「なぜ、月の形は変わるのか?」

こんな質問に、各界の先生方が回答します。実際の質問や、先生方の回答に学ぶこともあるのですが、先生=大人と、質問者=子供のやりとりで、印象的なやりとりが2つありました。

まず一つ目は、天文に関する質疑応答でのこと。

物腰優しく、ゆっくりと話しかけます。そして、すぐには問題に答えないのです。最初、質問をしてくれたこと、興味を持ってくれたことを褒め、その上で専門的な用語を使うことなく、子供にも話をさせ、段階毎に納得してもらいながら、回答を導いていました。いうなれば、電話で「会話」をしていたわけです。

もう一つ、昆虫に関する質疑応答。

質問してきた児童も小学校高学年であったからでしょうか。専門用語が多いのですね。昆虫の体の部位には、特定の呼び名がありますね。そんな言葉がどんどん登場します。んっ?!ちょっとわかるかな?といった感じです。そして、話を聞く児童も「相づち」をうってはいますが、理解できているかどうかの確認はありません。ひとしきり説明の後、先生の「わかった?」との問いかけにも、明確な返事はありません。結果「いろいろな本が出ているから、読んでごらんよ」と、質疑は終了しました。

この2つのやりとりが、おなじ日に放送されました。長いときには、一日の放送時間が3時間以上にもなりますので、同じ先生が何度も回答します。私がたまたま出張先への移動で聞いたその日も、この印象に残った二人の先生は何回か登場します。そして、何度も同じように聞こえます。納得できるのは、天文の先生のケースが多く、昆虫の先生の場合は、なにか話し方の勢いで圧倒されている感じです。

これは、決して昆虫の先生を批判するものではありません。このような番組に出演する勇気には(ほんとうに)敬意を表します。事前に質問事項のフィルタリングがおこなわれているでしょうけど、何を聞かれるかわからない。それもまさに発育途上である子供たちに説明するということで、簡単なことではありません。

しかし、です。私も、最初に例示した天文に関する質疑応答の方が、わかりやすく納得できたのです。原理や仕組みを説明する際に、天文学も、昆虫に関しても、専門用語=知識は必要になります。天文に関する内容でも、まったく専門用語を使わないわけではありません。そういった言葉を使う際には、必ずわかっているかどうかを確認していたのが天文学の先生でした。なるべく難しい言葉を使わずに、との配慮が感じられるお話です。もちろん、昆虫の先生も同じような配慮をする気持ちはもっていたでしょう。際立って異なっていた部分は別の点です。

いうなれば、昆虫の話をした先生が「説明」であったのに対し、天文学の先生は「会話」をしていた印象です。「会話」の場合、いきなり結論を言わないのです。一つ一つ相手に確認しながら理解を積み重ねていって、最後に理解してもらっているわけです。優しい語り口に、私は「忍耐」を感じました。とっても穏やかな雰囲気なのですけど、そう感じたのです。

「どうしたら、上手にプレゼンテーションができるのか」

私の永遠の課題です。プレゼンテーションが終わると達成感よりも、いろいろな改善点の方が頭に浮かびます。ああすればよかった、こうすれば良かったと思うわけです。終わった瞬間から「どうしたら上手なプレゼンができるのか」について考え、思い悩んでいるわけです。

冒頭にお話した電話相談は、事前に質問内容を選んでいるとはいえ、出たとこ勝負です。天文学と昆虫という、両者の内容に差はあっても、「忍耐強く語りかける」という部分に共通点があります。また、理解度を確認しながら話を進めていたことで、プレゼンテーションはコミュニケーションの要素もあることを再認識しているわけです。

一度に多くの聴衆を前にするプレゼンでは、なかなか全員の理解度を確認するということはできませんね。どうしても、一方通行になりがちです。私のように苦手意識があると、プレゼンの最中でも「早く終わって欲しい」と思います。そんな不届きなプレゼンターである私は、今回ご紹介した天文学の先生のように、「忍耐を持って、優しく語りかける」ということも、上手なプレゼンの一要素として心がけねば、と考えたのです。

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