ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●6-9サプライヤマネジメントの基礎 ~どのように関係を強化するか

サプライヤマネジメント実行の目的は、サプライヤとの関係をバイヤ企業にとって良好な状態に構築し維持するかです。今回はサプライヤマネジメントの最初の段階となるサプライヤとの関係を強化する方法について考えてみます。

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☆なぜ、サプライヤとの関係を強化するのか
サプライヤとの関係は目に見えて状態を確認し、強化されたかどうかを客観的に判断できません。したがって、良好な関係か、関係が強化できているかどうかは、日常業務の成果=購入結果から判断します。これも日々の購入が円滑に行われているだけでは、判断しづらいのが現実です。サプライヤとの関係が強化されていた結果、なんらかのトラブルに遭遇した場合に優先的にサポートが得られた状況は、分かりやすいケースです。また、バイヤ企業の意向をくんで要求内容をより多く盛り込んだ製品開発をおこなってくれたケースも認識しやすい例です。しかしこれらはいずれも結果論。トラブルに見舞われた事態で、優先順位を上げてサポートしてもらえなかった、あるいはサプライヤの製品開発が終わった段階で、希望が反映されてなかった。これでは遅いのが実情です。

したがって、サプライヤとの関係の強化は、強く意識して意識して行動しつつ、さまざまな側面から関係の状態の確認を継続しなければなりません。そして、バイヤ企業としてサプライヤからのサポートや便宜が必要な際には、スムースに提供される関係性が必要です。必要になっているに提供されない、あるいは提供に新たな働き掛けが必要となるのは、サプライヤマネジメントの有効性が疑われる事態です。

☆「関係を強化したい」バイヤ企業の意思を伝える
サプライヤとの良好な関係を構築するには、まずバイヤ企業として関係を強化したいとの意志を、サプライヤの営業パーソンへ伝えます。一度だけでなく、何度も言葉にして伝えます。言葉を示す行動にも表します。バイヤの発言も行動も、他のサプライヤとは区別しておこない、バイヤ企業としての意思を表します。具体的な他のサプライヤとの区別の方法には、次の手段があります。

1.限定したサプライヤで開催するサプライヤミーティングの招聘(しょうへい)
2.一般のサプライヤとは区別した場所での打合せ・商談の実施
3.定期的な上位者同士のコミュニケーション(1~2回/年)
4.サプライヤ向けにアレンジした内容での情報提供
5.社内関連部門へ調達購買部門から重要性のアピールと協力要請

このような取り組みは、航空会社の顧客対応が典型的な例です。搭乗回数や搭乗時の航続距離によって顧客をランク分けして、ランクに応じたサービスを提供しています。上記の1~5の対応を、航空会社のサービスで表現してみます。

1.機材整備工場への招待イベントの開催
2.搭乗前後のラウンジの提供
3.搭乗した際の挨拶「××様ご搭乗ありがとうございます」
4.上位会員向けの情報誌発行
5.関連サービスへの優先的取扱い(他の交通機関や宿泊のアレンジ)

こういった取り組みによって、他の多くの顧客と自分は区別されていると優越感を感じる、それが航空会社の狙いです。結果、顧客は「またこの航空会社に搭乗しよう」と感じるのです。

☆相思相愛を目指す
一般のサプライヤとは区別して扱い重要視している姿勢をサプライヤに対して継続的に伝えながら、同時にサプライヤ側の反応を観察します。サプライヤ側でも顧客を層別管理しているケースも多く、サプライヤから顧客としてのランクを伝えられるケースも多くなります。サプライヤとのコミュニケーションを通じて、バイヤ企業の意思をどのように判断しているかを見極めます。関係強化のプロセスでは重要なポイントですので、意識してサプライヤ関係者の発言に耳を傾けます。

日本の商慣習では「買う側が強い」との意識が根強く残っています。実態はどうでしょうか。こバイヤ企業側でサプライヤを評価し、区別して対応し関係強化すると決めたとします。同じような顧客評価をサプライヤもおこなっています。顧客だからというだけで最上・最良の対応を受けられるのが当然との意識は幻想です。バイヤ企業を重要視していない場合は、あえてサプライヤとしてのバイヤ企業の評価結果を伝えない可能性が高くなります。したがって、バイヤ企業の「関係を強化したい」希望と、サプライヤの意志にミスマッチがあった場合、サプライヤの営業パーソンは対応に苦慮します。その「苦慮」は、営業パーソンの発言や行動に表われるはずです。バイヤ企業と関係の強化を図りたいサプライヤとの良好な関係は、双方が同じ意志を持って初めて成り立つのです。双方の意向にミスマッチが確認されたら、どのように解消するかから始めます。

(つづく)

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