CSR調達/持続可能な調達~サプライヤーとの役割分担

バイヤー企業としてのCSRの実践は、従来の発注条件である

Q(quality 品質)
C(cost コスト)
D(delivery 納期)

に加え、環境、倫理、消費者保護、腐敗防止、労働条件や人権への配慮といった要素へ個別の対処が必要です。調達購買部門におけるCSR実践の難しさは、バイヤー企業側だけで問題解決できない点です。こんな例を考えてみます。厳しい発注条件に応えるために、サプライヤーが法律で規定された条件を逸脱した条件で従業員に労働を強いていたと仮定します。従来的な発想では、不利益を被った従業員は、経営者へ不利益の解消を求めました。しかしCSRの考え方の浸透によって、常態化したサービス残業の責任がバイヤー企業に問われる可能性がでてきた、と考えなければなりません。「サプライヤーが勝手にやった」では済まされないケースが多くなっているのです。

調達購買部門におけるCSRの実践は、従来の発注条件、とくにC(コスト)とは相反する取り組みとなる可能性が高くなります。上記2つの側面のうち、環境的側面の実現を考えてみましょう。より安全な原材料を使用するとか、環境への悪影響の少なくするため廃棄物を処理する場合、従来よりもコスト負担が大きくなる可能性があります。廃棄物処理は、目先の利益追求でなく、人体に危害をおよぼす可能性のある材料を使用し、被害が顕在化したと想定して行わなければなりません。日本でも昭和30年代以降出現した公害問題では、取り返しのつかない被害が実際に起こりました。過去の苦い経験によって、公害を起こさない取り組みは一般化しています。CSR調達とは、日本企業が公害によって学んだ対応を、他の分野にも広げなければなりません。

基本的にはサプライヤーとの協力関係をベースにし、最小費用での実現を、一体化した取り組みによる模索です。発注企業としては、多くのテーマの中での優先順位を設定したり、ときには、リソースの不足するサプライヤーへ具体的な対処方法の教育といった形で、サプライヤーへの歩み寄りが重要です。もっとも避けなければならない事態は、サプライヤーにはCSRの実践を依頼した。しかし結果としてサプライヤーで対処されておらず問題の発生してしまう、との事態です。CSR調達を実践していない場合、責任が発注元にもおよぶ可能性について想定内として対策を行わなければなりません。サプライヤーから購入だからバイヤー企業には責任無しとは言い切れないと重く受け止めて、対応を行わなければなりません。

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