高校の教科書がすごくて笑った件(坂口孝則)

以前、ある方の勧めで、高校の家庭科の教科書を読みました。圧巻でした。私の時代、家庭科とは、裁縫とか料理のイメージです。しかしいまでは、「人生100年時代」とか「仕事と私生活のバランス」「オレオレ詐欺に騙されないために」「ネットのなりすまし」などの言葉が並びます。

なるほど、それは現代に生きる知恵にほかならないのでしょう。もう、良くも悪くも、牧歌的な時代ではないのです。覚えることも増加し、心構えも、まったく異なっています。

会社も、組織も、仕事も、もはや最上級のものではありません。価値観が違うのです。だって、入社前から「仕事と私生活のバランス」ですからね。これでは上司と部下の話が噛み合わないはずですよ。

現代の労働基準法は、明治の工場法がベースです。おなじ時間に集まって、おなじような作業をして、おなじ時間に帰宅し、おなじように出世していた時代のものです。もはや法律そのものも、時代遅れなのです。

たぶん、私が現代の新入社員として働き始めたなら、成長しなかったでしょう。ひたすら長時間労働のなかで試行錯誤し、ノウハウを文面化したものが、いまだに書籍のネタになっています。しかし、そんなことをいっても、おっさんの昔話でしかありません。

現在、機械が人間の仕事を奪うといった議論があります。ただ、あれは時代の反復です。工業機械が広がったときにも、同様の議論がありました。アメコミのスーパーマンがなぜ人気になったかというと、敵はロボットの比喩だったからです。ロボットの比喩たる敵を倒す点にスーパーマンが人びとの心をつかんだ理由があります。つねに人間は機械やロボットからの侵食におびえてきました。

ただし、もはや別の意味で機械でもAIでも、RPAなどを入れて働くやり方を変えねばなりません。それは、働き方改革を進めなければ、働いてくれるひとがそもそも集まらないためです。そして多くの退職者を生んでしまうためです。

きっと将来、ひたすら働いて成功を願う若者は、労基法が無関係なように自ら独立するでしょう。そして、大半の若者は、時間内で効率的な業務をこなす道を選ぶでしょう。さらに、あえて抽象的に書けば、後者にとって重要なのは、「企業内の昭和イズム」をぶっ潰すことです。

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