コストテーブルに必要な6つの確認

すでに使用しているコストテーブルでも、これから新たに作成しようとするコストテーブルでも、次に述べる6つのポイントは必ず確認すべきである。確認すべきポイント、というか常に以下の6つの点は疑いを持ってコストテーブルを参照しなければ、せっかく苦労して作成したコストテーブルに逆に翻弄されて誤った結果を導いてしまう可能性もある。コストテーブルを使い始めた当初は、コストテーブルの導くデータに満足するよりも、逆に本当か?と疑うようなケースが多いはずである。そういった疑問を直視して、一つ一つ問題点として捉え改善していくのか。それとも正しいか誤っているかは別にして、見える化された数値に満足してしまうかは、コストテーブルがどうこうよりも将来的なバイヤーとしての成長に関わってくる。したがって、コストテーブルとは、作成して芽生えた疑問に答えを探し続けることが欠かせない取り組みになるのである。

●連続性

コストテーブルを作成して結果をグラフ化すると、コストの分布図→近似曲線を描くことによって、購入実績が無いアイテムにも大体の価格を読み取ることができる。この近似曲線から外れた実績金額や、見積金額をどのように扱うのか。基本的にはこの連続性というテーマに対して2つの取り組みが1必要になる。1つは連続性がない実績や見積金額はその理由を明らかにする。そして、次に連続性のある近似曲線全体をどのように下げていくかについても取り組んでいかなければならない。連続性が担保されただけではコストテーブルを作成した意味がない。コストテーブルで描かれた価格の傾向を、いかにして下げていくかに取り組まなければホストテーブルを作成した意味はないのである。

●起点はどこか

コストテーブルの作成初期段階では、コストテーブルの起点がゼロになってしまう場合がある。サンプルが1つであれば、形としてコストテーブルが作成できても、線で表現しようと思った時にゼロになってしまう。しかし、データの蓄積を進めれば自ずと起点はゼロではなくなる。では、どこが起点になるのか。この起点は、往々にしてサプライヤーの固定費レベルを探るヒントになる。また、キーファクターのどのレベルが強いのか、優位性があるのかを判断する基準にもなる。したがって、コストテーブルのデータ一つ一つを見るだけではなく、全体観を見る事もコストテーブルには欠かせない作業になる。

●コスト網羅性

コストテーブルは往々にして購入時点での実績金額や見積金額で作成される。基本はそれで構わない。しかし、そもそも論として購入して以降も維持費やメンテナンス費用が発生する場合は、そういったライフサイクル全体のコストを含めてコストテーブルを作成すべきである。購入時点が安くて、後々高いメンテナンス費用を支払わなければならない場合は比較的想像しやすい。バイヤーは、ライフサイクル全体で発生するコストを意識してサプライヤーを決定したり、コスト削減の取り組みを行うべきである。

●数量背景

コストをテーブルはどうしても購入単価にフォーカスして作成してしまう。私たちがモノを購入する場合、1個購入するのか、10個なのか、それとも100個、1000個によってコストが違うのは当たり前の話である。したがって、コストテーブルを構成する要素には、必ず数量背景を含めなければならない。同じような数量をコンスタントに購入する場合は無視しても良いかもしれないが、購入アイテムによって購入数量が大きく変更される場合、提示価格に何が問題があったら、まず数量背景を疑うべきである。

●購入ルート

同じ購入アイテムで、複数のサプライヤーが存在する場合、購入ルートも調査した上で高い安いを判断する必要がある。メーカーから直接供給されるのか、それとも商社や代理店を経由して供給されるのか。購入ルートは価格にも影響を与える。一概に直接購入の方が安くなるかと言えば、そんなこともないのが購入ルート確認の難しい点である。購入ルートに存在するプレーヤーが明確になれば、ある程度価格の類推も可能になる。したがって、物理的にサプライチェーンをやみくもに短くするだけではなく、なぜこの購入ルートなのか?なぜこの代理店や商社を経由するのかといった観点が欠かせない。

●キーファクターの妥当性

価格に影響がある要素として「キーファクター」も、常々これでいいのかと疑問を持ち確認を継続しなければならない。もし、これまでに述べた5つのポイントに疑念があるなら、いちど設定したキーファクターを再度設定し直すことによって、新たな知見を得られるかもしれない。まだ確信が持てなくても、複数のキーファクター候補を同時進行でデータを収集し、より実態を反映したコストテーブル作成に努めるべきである

 

これだけの内容を網羅しながらコストテーブルを作成し、更新し続けるのは非常に難しいと思われるかもしれない。しかし、こういった作業は慣れである。毎日継続的に行えば、例えば更新作業にしても一件当たりに要する時間は驚くほど短くできる。基本的に見積を入手したらホストテーブルがあろうとなかろうと、試行錯誤する内容は変わらないのである。読み取ったデータや試行錯誤の結果をExcelに残すか残さないかの違いである。コストテーブルは作れば作るほど内容が高められ、バイヤーとしても成長できる一石二鳥のツールなのである。

今度、コストテーブルのセミナーを開催します。詳細は以下のページをご参照ください。

購入価格の妥当性を確認する古くて新しい手法「コストテーブル」を作って鍛えて活用するセミナー(講師:牧野直哉)

あわせて読みたい