サプライチェーンとはなにか
日本では、1990年代の後半に、取引先との間の受発注、資材・部品の調達、在庫、生産、製品の配達などをIT(情報技術)を応用して統合的に管理し、企業収益を高めようとする管理手法として登場しました。
情報通信技術によって企業間を超えたサプライ・チェーン(供給連鎖)全体を最適化し、ビジネス・スピードを画期的に短縮できる革命的手法と言われましたが、そもそもアメリカ製造業の日本型経営研究から生まれた手法の一つで、モノづくりではJIT(ジャスト・イン・タイム)の概念が主要な要素になっています。この点が、日本でサプライチェーンの考え方に今更感が拭えない理由です。
この点を掘り下げると、日米企業の業務の進め方の様々な面に言及が必要です。もっともわかりやすい例は、内外作比率です。自動車産業を例にしても、アメリカ企業では内作比率が高かったのに対して、日本は、外作比率が高く、外作をコントロールするにはサプライチェーン的な考え方がそもそも必要だったのです。アメリカ的には目から鱗てきな考え方に映ったのでしょう。ハイテク企業を中心に自動車産業、流通業などで導入され、企業間競争力の中核になりました。
1台に約3万点の部品が使われている自動車ではサプライチェーンが重要である。効率的な生産のため、必要量、納入量、納期が厳密に定められています。2000年以降の円高で部品生産を海外に広げた。また1社もしくは少数の取引先に発注を集中し、供給網が国境を越えて広がり、複雑になりました。2011年の東日本大震災では、被災地のサプライヤーが被災して、アメリカやヨーロッパ、アジアのサプライチェーンに影響する事態になりました。こういった傾向は、製造業に限りません。サプライチェーンは全国的に多店舗化を展開しているコンビニエンス・ストア、SPA(製造小売業)形態のファッションビジネス等でも重要性が高まっている。社会インフラ化したコンビニの供給網の寸断は、国民生活に及ぼす影響が甚大になっています。
サプライチェーンの高度化によって、すべてジャスト・イン・タイム化されたことで、サプライヤーの疲弊化が指摘されています。近年では、労務管理施策の改善、人格リスクへの取組み、温室効果ガス排出量の削減等が重要になっているのです。