連載3回目「購買はモノを買ってXXを売る」

前回は、自分の商品価値を高めることについて述べました。今回は、「その商品をいかに知ってもらうか、いかに売るか」についてです。具体的には、調達・購買部門内や他部門の関係者から、さらには社外から、自己のスキル・知識について良い評価を受けることです。

この目的は、自己の仕事での長期目標を達成することだと思います。例えば、部門内でより重要な役割を果たす地位に就くこと、希望する他部門への異動を実現すること、等です。他の会社へより良い待遇で転職することもこの目的の一つでしょうか。

調達・購買パーソンは、売り込みの訓練する機会が多くないのが実情です。外部の会社から売り込まれる立場の職種だからです。そのため、意識して売り込みをする機会を見つけたり、様々な状況で自らをアピールするように意識する必要があるのです。

しかしながら、いかにも自分を売り込んでいる、アピールしているという姿勢が表面に現れてしまうことは避けなければなりません。ほかの皆さんが、拒否反応を起こしかねないからです。

自らのスキル・知識が高いこと、つまり商品価値が高いことが理想ですが、高いかどうかの妥当な判断するのは容易ではありません。また、完璧さを目標に置いて売り込みに相当する活動をすることを躊躇してしまうと、せっかく売り込みできる機会を逃しかねません。発展途上であっても、自己の現状に沿って機会を生かすというのが、現実的な対応だと思います。

調達・購買業務に関する一般的な評価は残念ですが、あまり高いとは言えません。実際、私が調達・購買業務に従事していた時、「買うという気楽な仕事でいいね。」とか、「調達・購買に交渉(机をたたく)以外にどんなスキル・知識が必要なの?」などと言われたこともありました。

単なる「調達・購買の経験があります」という言葉は、調達・購買を知らない人には、何のアピールにもならないことを認識していたほうが良さそうです。 具体的にどのようなスキル・知識があるのかを、アピールすることが肝要なのです。

それでは、どのようにアピールすれば良いのでしょうか。以下にスキル・知識をアピールできる機会の例ごとに、考えてみたいと思います。

まず、身近な人達の信頼を得て、少しずつアピールを輪を広げてゆくという手順が良いでしょう。急いで広げすぎると、狙った効果をもたらせず、逆効果になりかねません。また、売り込みというと、商品の広告・宣伝のような、目立つ派手な活動のようなイメージを持つかもしれません。

しかし、他の人たちが敬遠したがるような、手間がかかる地味な活動をすすんで引き受けることも、ある意味で自らのアピールです。このような活動を積極的に行い、自らのスキル・知識を静かに表面化することにより、身近な人達の信頼を得ることができるのです。

1. 日頃の業務の中
例)納期遅延などの緊急問題対応で、体系的な考えを基盤に問題解決をしたことを、上司や生産などの関連部門印象付ける。

2. 他部門との連携活動
例)製品開発期間の開発・設計部門とのコスト低減活動の連携活動で、価格交渉やVEなどでイニシアティブを取りコスト低減の高い知識・スキルがあることをアピールする。

3. 会社のプロジェクト
計画立案(目標・目的・タイムスケジュール・役割分担等)やプロジェクト実行(ツールの開発・メンバーの強みの活用等)などでリーダーシップを発揮して、人間関係構築力、戦略的思考力などをアピールする。可能であれば調達・購買活動で習得したスキル・知識を発揮する。例えば、会社の経営に関連する提案プロジェクトなら、調達・購買取引先の例を参考に自らの経営戦略の知識を生かして、提案内容を考える、等だ。

4. 外部での交流会など
異業種交流会などで、世話役や活動などの説明・発表などを積極的に引き受ける。同窓会やクラス会では、仲間の所属部門などを知り、その業務に関連付けて自分の専門性の話をする。

また、視点は少し異なりますが、自らの専門性の見せる化の工夫も考えてみましょう。例えば、自分の机の上に得意分野の専門者などを置き、連携活動をしている他部門の人が来た際に、調達・購買としての自己の専門性を印象づけるという方法もあります。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

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