コストテーブル ケースストーリー2 「コストテーブル活用法」

  • 登場人物

結城:入社2年目のバイヤー

石井:購買係長、結城の上司

コストテーブルの作成方法を学んだ結城は、担当する購入品のコストデータを蓄積して作成し、コストテーブルを活用し決定価格の妥当性を説明していた。
たまたま結城とサプライヤーの価格交渉を目にした石井は、ただ安くしてくれ、予算に入らないと主張する姿に落胆してしまった…コストテーブルは、社内説明にしか使っていないのか…

「結城、なぜコストテーブルを使って交渉しない?」

 

コストテーブルを作成して、データの更新も頻繁に行って、内容が最新の状態を維持していれば、まずは自分が決定した購入価格の妥当性に活用したくなるのはやむを得ません。コストテーブルとは、あくまで社内的な資料であり、そのような使い方はコストテーブルの目的です。しかし、さまざまな用途に活用可能なコストテーブルの1つの使用方法に過ぎません。そして、社内的な説明のみへの使用を継続すれば、コストテーブルの内容に問題があったとしても判明しづらくなってしまいます。

コストテーブルの内容は、バイヤー企業にとってコスト競争力を示す重要な情報です。社内であったとしても、業務上関係のない人には後悔したくないと考えてしまいがちな資料です。確かにやみくもに社内にオープンする必要はありません。情報管理の観点からも、コストテーブルの内容を自由に閲覧できる人はある程度制限を設けるべきです。しかし、だからといって内容のすべてを徹底的に秘匿すれば良いのではなく、例えば交渉の場面では、コストテーブルを相手に参照させ、希望価格の妥当性を説明するのも、コストテーブル作成の目的になります。

実際にコストテーブルを作成したバイヤーからすれば、自分の手の内をサプライヤーに明かす行為だ、と考えるかもしれません。しかし、コストテーブルは価格の妥当性を検証するだけでは非常にもったいないツールです。より購入価格を安くしたい、価格以外の購入条件も自分たちの希望に近づけたいときに活用できる資料です。したがって、妥当性の説明が本当に正しいのかどうかを検証するためにも、実際に見積書を提出するサプライヤーに内容の一部を開示してみるのです。このコストテーブルによれば、あるべき価格が提示できるはずです。勘や度胸に頼った根拠のない指値ではなく、コストテーブルに基づいた指値が可能になるのです。

例えば、軸の単位や数値を消したグラフを提示して、今回の見積依頼の内容であれば、この金額レベルが妥当ではないかといった話をサプライヤーの営業パーソンにしてみましょう。当然ながら、サプライヤーは否定するでしょう。その否定は、恐れるものではなく、好ましい反応です。「どこがおかしいですか」と、具体的に問題点を指摘してもらいましょう。指摘された問題点が「なるほど!」と納得できる内容であれば、コストテーブルに反映させればいいのです。こうやってコストテーブルは、データの更新と、さまざまな人に見てもらうことで内容が鍛えられます。すべて見せるのではなく、一部だけを見せて情報を引き出すのです。

今度、コストテーブルのセミナーを開催します。詳細は以下のページをご参照ください。

購入価格の妥当性を確認する古くて新しい手法「コストテーブル」を作って鍛えて活用するセミナー(講師:牧野直哉)

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