恋愛と裏切りと調達業務(坂口孝則)

日本では年間に60万組が結婚して、20万組が離婚します。つまり、三分の一が離婚します。先進国のなかで飛び抜けて大きな数ではありません。しかし、かなりの数ですね。実際に、私のまわりでも離婚している方々はかなりの数にのぼります。その理由は、さまざまですが、「性格の不一致」が一位の理由です。まあ、それしか他者に説明しようがありませんものね。

私が興味深かったのが、実際に、離婚の相談を聞いていると「相手がどういう人間かわかっちゃって、落胆した」と感想を漏らす点です。きわめて興味深いですね。「あなたのことを、もっと教えて」と恋愛がはじまるのに、恋愛は「あなたのことが、わかってしまった」と終わるのです。この皮肉。

先日、大阪で若い調達部員と話をしました。彼は、調達業務から離れたくてしかたがないといいます。理由は「もう先が見えましたよ」「こんな未来のない業務からは、足を洗いたいから」と。それでいろいろな話を聞くと、ほとんど調達業務の深さを理解していません。決算書も読めないし、さらには、表面的な仕事に翻弄されて、それで絶望感を感じています。このところ、新型コロナウィルスの関係で、取引先の中国影響を調査することで七転八倒して、疲労感だけが溜まっているようです。

違うんです。そのていどの仕事じゃないんです。だから、私たちは、調達業務なんてこんなていどですね、と割り切ってしまう若手にたいして、奥深さを見せなければなりません。それが、たぶん、調達部門の先輩に課せられた責務です。

ちょっと話が変わるようなのですが、私は10年前に、米国でCSR調達がはじまろうとしているなかで、ちょっとした衝撃を受けました。通常ならば、日本でCSR調達とは「めんどうくさい」とか「時間がかかる」といったネガティブな印象を持たれていると思います。しかし、米国で会った調達関係者は、むしろCSR調達について、「社内で自分の地位が上がる好機だ」ととらえていました。これが衝撃的でした。

それまでは技術的、あるいは、開発の観点から、社内の技術部が独自でサプライヤを選定していました。しかし、これからは、CSR観点からサプライヤを選定しなければならないので、調達部に相談したうえでサプライヤを決定する必要がある。だから、調達部にしてみれば自分たちの社内地位をあげるキッカケになるというわけです。つまり、社内の権力闘争の一部として、世界のトレンドを活用していたわけです。

私が何を言いたいのかというと、つまり、調達マネージャーは調達業務の深さと、ある種の功利性を語るべきではないでしょうか。「私はこれだけやっている。だから、市場価値も高くなった」という矜持。調達業務が浅いものだと思ってしまい、たんに伝票を右から左に流すだけ、交渉するだけ、と思ってしまうと若手は誰もやる気にならない。さらに、世界の潮流を通じて、調達部の社内地位をあげられる可能性を示唆すること。これが、何よりも重要です。

「あなたのことを、もっと教えて」ではなく、「調達のことを、もっと教えて」と若手に渇望させる取り組み。そのわからなこそが、逆説的に若手に希望と前進をもたらすのです。

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