サプライヤトラブル対処法4(牧野直哉)
●情報発信方法
前回まで、サプライヤのトラブル発生時の情報統制、サプライヤや社内から発信される情報の集約について述べました。購入品に関するトラブルですから、事態の収拾や抜本的な解決にはバイヤ企業内の関連部門の協力が必要です。関連部門に適切な対処をうながすためにも、調達購買部門に一元化した情報は、早急な社内展開が欠かせません。調達購買部門で情報を保持していても解決が一向に進まない事態に陥りかねません。前回述べた「情報の整理」を行ったらすぐに社内に向けて展開します。
まず情報発信する内容です。
1.入手した情報
様々な発信源から入手した情報を、時系列に整理して社内関係者(状況によってはサプライヤ関係者も含む)と共有します。重要なポイントは、情報管理は必要ではあるものの、できるだけ包み隠さずありのままを関係者に伝えているといった「印象」を発信者である調達購買部門が得ることです。トラブル解決を目指し団結しなければならない集団の中で、情報を隠しているといった不信感が生まれると、情報統制を妨げます。例えば複数の発信源から相前後して同じ情報がもたらされた場合、1つの情報に対して「これだけの発信源がありました」といった発信者名を列記するような表現が必要です。非常に手間のかかる作業ですが「情報を発信してくれた」意味は、トラブル収束に貢献したい気持ちです。情報の共有局面においては、そういった「思い」へ配慮が、トラブルを主導的に解決する調達・購買部門への信頼を生みます。
一方、発信する情報には、個人攻撃を生むような情報発信は避けます。例えば、ある工程の作業者ミスによるトラブルが発生した事態を想定します。作業者が○○さんと特定できる場合でも、バイヤ企業としてサプライヤに対して責を問うべきです。仮に作業者個人に対して何らかの処置が必要ならサプライヤの問題、対処すべき課題です。法人取り引きですから、バイヤ企業はサプライヤに対して責を問うべきであり、個人攻撃は将来の円滑な取り引き関係を見据えて慎みましょう。