サプライヤトラブル対処法8(牧野直哉)
事例:低頻度購入品の価格変動対応
購入品の中には、数年に一回の頻度で買う品目がある。見積依頼を行うと、原材料に起因する大幅値上げを通達ベースで知らされる。価格見直しを申し入れる/臭わせても、相手にされず、サプライヤの通告ベースの大幅値上げを飲まざるを得ない
対応策1:短期的(緊急)対応
多頻度購入品であれば、QCD全般に目配りを行って、発生事象にも適切に対処できる可能性が高まります。低頻度=めったに購入しない品目の場合、問題の根っこはサプライヤとのコミュニケーション頻度です。
低頻度であれば、購入機会にしかコンタクトしないケースがほとんどです。調達・購買部門/バイヤの繁忙度合いを思い浮かべればやむを得ない部分もあります。サプライヤの営業パーソンの立場からすれば、こんな風に考えているかもしれません。
・たまにしか注文がない=いつ注文があるのかわからない
・たまに注文してくると、コストダウンだ短納期だとうるさい=面倒な客だ
調達・購買部門/バイヤからすれば、自分たちのリスクヘッジには、注文が確定して初めて連絡する方が良いですね。自社リスクをヘッジしているのは、サプライヤに納期対応や価格面でリスクを負わせていることに他なりません。この点をまず認識します。
その上で、たまにしか買わない品目について「購入しない」選択肢があるかどうかを判断します。いや、そんな選択肢はないのが一般的でしょうね。でも値上げ要求を受ける=購入条件が悪い場合、日常的な買い物では「買わない」選択肢で対処する場合があります。「買わない」のは金輪際買わないではなく、購入時期をずらせないか検討するのです。顧客と締結した契約がある場合には難しいでしょう。しかし社内需要の場合は、翌年に買うといった選択が可能な場合もあるはずです。可能性は少ないでしょう。しかし、ダメ元で検討してみる価値はあります。社内需要の場合は特にです。
続いて「大幅値上げを通達ベースで知らされる」点です。まず「大幅値上げ」は、2022年4月時点の経済環境を踏まえ、前回購入から時間が経過している場合、値上げ幅が「大幅」になってもやむを得ないでしょう。バイヤとしては好ましい状況ではありません。しかし昨今の原材料費上昇、高値基調は複合的な要因が継続的に発生しています。使用する原材料によって「大幅」と映ってもやむを得ません。
しかし市況変動への対応以上に高値で購入するは、バイヤとして本意ではありませんね。こういった事態で最悪の対応は、サプライヤは売価アップを要求、バイヤは例えば実績価格での再購入を要求してしまうこと。お互いの主張が平行線をたどる事態です。購入が決定してサプライヤにアプローチする場合、調達リードタイムもあわせ考える事態が大半でしょう。主張し合う時間が長ければ、調達リードタイムに踏み込んでも合意に至りません。最終的にはサプライヤの主張をすべて受けいれて納期対応を優先させるといった結論が待っています。
サプライヤの主張を丸のみしても顧客との契約納期が守られればよしとするといった考え方もあるでしょう。こういった状況はサプライヤの値上げ要求内容、値上げ幅が根拠に対して妥当性をもっているかの確認が置き去りにされる事態です。中長期的な購入価格の妥当性に大きな影響を及ぼします。次回の購入時にも、今回の経緯を踏まえて価格決定が行われる保証はありません。購入経緯はどうあれ、立派な購入実績なのです。
原材料費アップによる影響度は、しっかり把握して、サプライヤ要求内容の精査は、低頻度購入であっても行うべきですね。ポイントは、原材料費変動を反映して、従来の損益レベルを維持するための要求なのか。あるいは機に乗じて損益レベル改善を目指しているのか。決着にはバイヤ企業とサプライヤの力関係で決まる部分もあるとはいえ、しっかり主張すべきは行うべきです。