サプライヤトラブル対処法14(牧野直哉)

・支払サイト問題の変遷
前回の記事で、支払いに関連する「サイト」には、

・長年の商取引習慣による後払い
・発注企業の運転資金負担の肩がわり

の2つの側面があるとしました。日本では1999年に初めていわゆる「ゼロ金利政策」が導入され、デフレ懸念が除去されるまで継続すると宣言しました。以降今日まで金融緩和が継続しています。現在は金利が安く支払い「サイト」期間は、社内やサプライヤとの間で話題に上ることが少なかったテーマでしょう。

最近では少し状況が変わっています。特に下請法に関連して「下請代金の支払い手段について」といった通達が発出されています(平成28年に始まり、令和3年にも再通達が出た)。支払い手段によって発生する「サイト」は、行政が短縮化を先導しています。

サイト短縮の目的は、企業規模によって発生する格差の是正です。大企業よりも悪い条件で運転資金の借入を行っている中小・零細企業にとって「月末締め翌月末120サイト払い」の場合、実質的には、180日=半年分の運転資金の準備が必要でした。そういった資金負担を和らげる狙いです。

海外企業からの購入も行ってきた私の印象では、2つの考え方をもっています。1つは、100%の支払いを現金で受けるために半年もの期間は、少し長く感じます。海外企業の場合、受け入れ後すぐに支払手続きしないと、間に合わないケースが多かったのです。一般的には受入後30日以内でした。支払い条件については、国内と海外で随分と違っている印象でした。

長年にわたって取引を継続している場合、取引開始から長くても半年乗り切れば、以降は毎月入金があります。一端乗り切ればサプライヤの自助努力で自己資金を蓄え、運転資金を返済すれば、財務体質も改善されます。バイヤにとってサプライヤの財務体質は良好であればあるほど安心した取引が可能です。支払サイトの設定は、バイヤが安心して取引を実践するためのハードルとも言えます。少し上から目線ではないかといった御指摘もあるかもしれません。しかしバイヤ企業として設定するルールとしては「あり」と考えるのです。

行政としては短縮化が叫ばれる中で発生した今回のトラブル、果たしてどのように対処すべきでしょうか?

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