サプライヤー戦略(1)なぜ企業は稼ぎ続ける必要があるのか-4
ROAは5%から、4.76%に減じてしまいました。当然です。総資本は増えたのに、利益の額が同じであれば、比率が変化していきます。株主が105万円を預けているのに、その年度は前年に比べて低い率のリターンに甘んじているわけです。これが続くと、株主から見た魅力はなくなり、この会社の存続自体があやういものとなります。
では、どうすれば良いか。おわかりでしょう。利益をより稼げばいいのです。もっと高く製品を売ればいい。あるいは、市況が冷え込んでいる場合であれば、調達品の価格を下げていくことです。毎年コストを下げねばならない、とは単なる精神主義ではありません。これは、会社が魅力的であり続け、預かったお金を有効に使いROAを向上させるという、きわめて実利的なことなのです。そして、そこに調達・購買部門の意義も内包されています。通常であれば恣意的に設定されている調達・購買部門のコスト低減率とは、このROAを確保するために、全社的な至上目標として厳密に決められるべきものなのです。
私は冒頭に「どうして友達は必要なの?」という幼子のいぶかりから始めました。その答えとして「友達なんか不要だ」といったように、「なぜ企業は稼ぎ続ける必要があるのか」という問いには「稼ぎ続ける必要などない」とあえて答えてみたい。なぜなら、物事にたいしてそのような根本疑問を持つような人でなければ、逆説的ながら「稼ぎ続ける調達・購買部員にはなれない」と私が信じているからです。
この章では利益の根本から出発し、ほんとうのサプライヤー戦略までを説明していきます。サプライヤー戦略とは定性的なものではありません。理論を応用した、硬派で定量的なものなのです。