調達担当者を騙す方法を知っていますか(坂口孝則)
コロナ禍で各社の調達部門は大変な状況にあります。しかし、営業部門のほうがより大変です。売上減少に伴って新しい顧客を探さねばなりません。一方で重要なのは、既存の顧客をつなぎとめることです。
みなさんが調達している企業があるとします。その企業は、みなさんが新たな取引先を探してもらっては困ります。だから取引維持と取引拡大を狙います。
先日、有名な洋書で営業部門が調達部門に伝えるべき5つの内容があると知りました。それが下記です。つまり、既存の取引先が浮気しないように釘を刺す方法です。営業と調達では立場が逆ですが、ちょっと笑ってしましまいました。
1.結果報告
2.判断基準確認
3.切り替えリスク
4.切り替えのコスト
5.改善の報告
さらに具体的には次のとおりです。
1.これまで納品した製品やサービスの良さを強調する。目標値を達成したとか、効果があったといった実績を改めて振り返る。
2.自社を選定してくれた判断基準を繰り返す。QCDの卓越さなど。これを繰り返すことによって、調達部員に判断が間違っていなかったと暗示をかける。過去の判断が正しければ、将来の判断も自社を選んだほうが正しいと思わせる。
3.取引先を変えると、今後の目標が達成できない可能性を示唆する。もっといえば、新規取引先では同じようなレベルは難しいと述べる。
4.さらに取引先の切り替えにはテストの費用や時間がかかると強調する。失敗してしまったら回復に費用がかかると述べる。
5.また自社と取引を継続してくれたら、サービスレベルやQCDが向上する予定であると述べる。コスト競争力アップなどを継続して説明する。
逆に立つとこういう工夫が必要なんですね。私は笑ってしまいました、と書きました。しかし、示唆的に富んでいるかもしれません。例外はあるにせよ会社員は変化を嫌う生き物ですから、このような説明をされたら既存の取引先を継続する気持ちもわかります。逆にいえば、現状維持バイアスを解除するためには、上記5つを超越するくらいの新規取引先採用メリットを考慮せねばなりません。
取引先の選択と集中が叫ばれて長年が経ちます。それでも、多くの企業では取引先の集約が進んでいません。既存の取引先を継続するだけです。
上記は有名な洋書からの引用です。大げさな話をしますが、調達改革のためには、あえて営業側の施策を学ぶことで前進するかもしれません。意図的に既存取引先を選ぶなら問題ありません。重要なのは、意図的であることです。
コロナ禍において必然的に取引先戦略を見直さねばならないタイミングだからこそ、今回は上記を取り上げました。