AI時代に勝てる調達人材を全員で考えた(坂口孝則)

あるコールセンターの関係者から聞いた話です。コールセンターではお客からの質問だけではなく、苦情やクレームも受け付けねばなりません。想像してもわかるとおり、クレームを受け続けるのは精神的に大変です。

聞いて面白かったのは、精神的な苦痛を和らげるために、電話を受けるスタッフの前に鏡を置いたそうです。落ち込んでも、自分の顔が鏡に映れば、せめて笑おうとするらしい。そして、もっと面白かったのは、電話をかけてくる人と、電話を受けるスタッフの出身県をあわせる工夫。そうすると、とたんに笑い合う雑談などが進むようです。

これはお客の個人情報を事前に収集する必要があるため、簡単には真似できません。しかし、出身県かあ、と思いました。これは機械には真似できません。

さて、話を変えるようで変えませんが、先日、日本中の調達人材100人とオンラインでイベントを開催しました。定員いっぱいお集まりいただきました。すると、どうしてもAI時代でも生き残る調達人材が話題になります。

そこで現時点では
「信頼」
「非合理」
「AIを使いこなす」
という観点からまとめました。

たとえば、これから機械音声翻訳がもっと進むと思いますが、取引額100億円の商談で機械音声翻訳だけを使うでしょうか。たぶん通訳を雇うはずです。また、AIの進化によって税理士の仕事が消滅するといわれていますが、そうなるでしょうか。私は、ならないと思っています。というのも、判断に迷うことばかりだからです。私は税理士の「信頼」にお金を払っています。

まったくAIが使われない、という主張ではありません。最後に、人間の「信頼」が残るという話です。調達業務では、その信頼を得るために、「非合理」性が必要ではないでしょうか。つまり、合理性とかを超えて、「あなたと一緒に仕事がしたい」と関係者から言ってもらえることです。

なにやら抽象的な話をしています。そのポイントは、おせっかい、にあります。ピンク・フロイドのアルバム名ではありません。現在、テレワークだからか、誰もが決まった仕事しかしていません。でも、社内のひとに、もうちょっと、おせっかい、をしてほしいのです。具体的には、他部門の施策状況を教えてあげる、役に立つ情報を与える、ストレートに「何か困っていることありませんか」と訊く。20年前ですが、私の師匠は毎日ランチを他部門の人たちととっていました。

そして、私はこのところ、
Procurement as a Service
という概念を提唱しています。

これは調達部門を「他部門へ最高の調達サービスを提供する部門」と再定義することです。

2020年の振り返りと、今後に起きることと、​2021年に調達人材が取り組むべきこと


上で、無料説明動画も公開しました。

そして、「AI人材」か「非AI人材」と区分けするのではなく、調達人材であってもAIを気楽に使いこなす発想の転換が必要だと思います。これだけ各ベンダーが使いやすいサービスを提供しはじめていますし、数日、学べば業務への本格適用を構想できます。

つまりAI人材に勝つ負けるではなく、全員が使いこなせばいいのです。エクセルだって発表されたときは敬遠されましたが、いまでは誰だって使えるのですから。調達人材の格差は、潜在的な能力差や頭の良さではなくなるかもしれません。

代わりは、わからないものもやってみるか、という行動力差になりつつあります。

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