CO2削減がコスト削減と等価になる衝撃(坂口孝則)
先日、SDGsへの各企業の対応を話し合うオンラインイベントを開催しました。私も紹介しましたし、他の登壇者からも紹介があったのは、「社内炭素税の導入」です。おそらく、これは一つの大きな流れになると思います。
これは、実際の税金ではなく、あくまでも仮想税です。一つの企業内で事業部や工場が分かれていると思います。そこで、それぞれの事業部や工場で、CO2の排出量を算定します。適当に算出できないように厳しい社内チェックを受けます。そのうえで、CO2排出量に一定金額をかけて本社に納める仕組みです。
こうすれば、事業部毎の優劣が明確になります。なによりも、事業部にとってはCO2削減が事業利益に直結するので真剣になるらしい。その代わり、徴収した本社は、新たなCO2排出削減技術や、CO2吸収技術に投資する仕組みです。まあCO2削減できない事業は撤退もやむなき、ということなのでしょう。シビアながらこれは一つのアイディアでしょう。
なお現在、EUでは炭素税としてCO2排出1トン当たり55ユーロくらいが議論されています。かなりの金額負担になります。もしかすると、1トンあたり1万円くらいになってもおかしくありません。
ところで環境庁のデータベースによれば、100万円くらいの機器類であればサプライチェーンで4トンくらいのCO2を排出します。これは概算ですが、さほど遠くないと思ってください。そうすると、CO2排出に課税されるとしたら4トンだから4万円ですよ。これはおそろしいインパクトがあります。
しかし、逆にいえば、CO2排出量の削減は、もはやコスト削減と等価といってもいい。だって100万円が104万円になって、その4万円を削減するなんて相当な努力が必要ですからね。しかも、交渉すればサプライヤの価格は下がるかもしれません。でも、交渉だけでCO2排出量は減りません。CO2排出量は事実なので、実際の改善がなければ減らないのです。
私の好きな言葉遊びを一つ。これまで調達部門はCRを目標としていました。いうまでもなく、コストリダクションの略語です。しかし、これからはもう一つのCRが登場するのではないか。もちろん、CO2リダクションです。これまで脱炭素っていっても、評価指標に組み込まれていなから真剣ではなかった部門が大半でした。しかし、もう一つのCR指標が調達部門の行動を変えるのではないでしょうか。
ところで、私に向けて「CO2がほんとうは地球温暖化につながっていな可能性がある」とか「電気自動車よりもハイブリッドが環境に優しい」とか「再生エネルギーの拡大は良いことばかりではない」というご意見をいただきます。あとはEU陰謀論とかも。はい、もちろん、それらの関連書籍は読みましたし、理解しています。ただし調達とは時代対応業でもあります。もし、世の中の言説が間違っているのであれば、それを覆す戦略をもたねばなりません。
正しい情報を摂取しつつ、さらに、潮流としてのCO2削減にも準備をする。私は、どうもこの時代は、高度な二枚舌が必要とされているような気がしてなりません。