DXからPX(調達改革)を実現する2021年(坂口孝則)

昨年よりDXが叫ばれています。これはデジタル・トランスフォーメーションの略です。私は昨年、コンテンツも発表しました。

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ところで、先日、某社のDXレポートを読みました。なんと194万円もするレポートです。しかし、もっと驚いたのは、企業がDX化で「生産性の向上を目指す」と考えていた点。従来の仕事を単に機械に置き換えるイメージのようです。

ただ、重要なのは、デジタルツールを使って、そもそも業務を刷新する覚悟が必要です。従来の延長線上に業務を考えるのではありません。つまりIX(インダストリー・トランスフォーメーション)、ならびにPX(調達転換、プロキュアメント・トランスフォーメーション)が必要です。

一例をあげます。私はダイセルに注目しています。彼らは生産システムを刷新しました。製造原価を下げ、熟練工のノウハウをデジタル化していきました。不良が生じたときに、なぜ不良が生じたのか、どのような対策を講じるべきなのかを徹底的にデータ化しました。

彼らはいわゆるプロセス産業に属しますが、自分たちが解決した問題は他社でも応用できると考えました。サプライヤの改善からはじめ、さらにはシステムやコンサルティングを外販にまで広げました。改善行為自体を商売にしてしまったのです。ものづくりを実践し、自分たちのシステムを現場で検証する。そして、それをパッケージ化して外部に販売。事業の柱として完成させました。

さて、PX(調達転換)を考えてみましょう。私はこの数年「調達担当者がコンサルタントになる日」を次なる道として提唱しています。ですから、何度も聞いた人がいるでしょう。

つまり、こういうことです。調達部門はまずは既存業務のDX化に励む。ここまでは、たしかに「生産性の向上を目指す」と類似しているかもしれません。しかし、RPAやAI、ならびに先端のツールで自社での成功事例を作ります。そうすると、いまの人材数は不要になるでしょう。その余剰人材をコンサルタント化します。

そして、まずは関係会社、関連会社からはじめ、そのノウハウを注入します(関係会社と関連会社の違いは検索なさってください)。グループ会社の実力を高めた上で、それを外販していきます。

驚くほど、調達ノウハウやDX化の成果は共有されてません。以前、マザー工場という単語が流行しました。これからはマザー調達が登場するべきです。そうすると、コロナ禍でまだ難しいとはいえ、調達担当者は海外を行き来し、日本で試行錯誤した結果の伝達役として活躍することになります。

実は、私は調達関係者の第二キャリアは、この道にあるのではないかと考えています。

重要なので繰り返します。DXが終わりではありません。その先のIX(インダストリー・トランスフォーメーション)、ならびにPX(調達転換、プロキュアメント・トランスフォーメーション)が重要です。そして調達業務そのものを販売できないか考えてみる。一人の調達担当者も、今後の生き方を考えながら仕事にあたる時代になったのだと私は強く思うのです。

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