4000円で調達部門を激変させる方法(坂口孝則)

先日、有名な漫画家から聞いた話です。この方は、父子家庭で育ちました。貧乏で育ったようです。唯一の楽しみは夏祭りだったそうです。なぜならば、年に一度だけお父さんが2000円をくれるから。その2000円で祭りを遊ぶのが楽しみで仕方がなく、その一日を楽しみに生きていたようです。

小学校高学年の夏。祭りで、お父さんが4000円を特別にくれたようです。お父さんは「楽しんでおいで」といってくれました。彼はあまりに喜んで遊んでいたら、お父さんがいなかったそうです。そこから30年近く、お会いしていないそうです。どうも、お父さんにとっては、別れの4000円だったのですね。

彼は、そこから孤児院に引き取られることになります。絶望の日々で、彼はノートにマンガを書き始めます。すると、先生の一人が「これは上手い。才能あるよ」といってくれた。その一言を信じて、彼は切磋琢磨を続け、いまでは誰もが知っている有名な漫画家になりました。たった一言が支えでした。

話を変えるようで変えません。私はあまりこの手の書籍を勧めませんが「大富豪になる人の小さな習慣術」(ブライアン・トレーシー著)があります。この冒頭に書かれている解説は最高です。ここで自信を持つことの重要性について書かれています。自信を持てば成功するからです。通常、なぜ自信を持ったほうがいいかというと、それは自信満々の人に誰もが従うからだ、と解釈されます。

ただ、この本は、そうではない、といいます。なぜ自信を持ったほうがいいか。それは自信によって自分が成功するとわかっているならば、試行錯誤できるようになるからだといいます。この解説に私は衝撃を受けました。試行錯誤できるようになるのが一番なのです。

話を調達・購買業務に移します。会社に出向いていって、話をすると、よく「そんな施策はできません」と事情を説明されます。できない、という自信で満々なのです。できる、という自信ではなく、その逆。できない、できない、と説明するばかりに、言霊が乗り移っているかのようです。ときとして、現状を変えられない自分自身が誇らしそうでもあります。

この1年3ヶ月、コロナ禍で日本の官僚機構は平時と変わらないことを露呈しました。それを国民は批判しますが、私は民間企業も同じではないかと思っています。官が腐っているとき、民も同様に腐っているからです。「とりあえずやってみましょうか」とスタートできない病気。

ここで提案です。私たちはこれから「失敗こそ最大の参入障壁だ」と考える時代にやってきています。規定されたことをやるなら機械でもできます。試行錯誤を通じて得た知見を次に活かすことが人間に残された仕事です。それこそAIやロボットにできません。

そこでさらに上司のみなさんに提案です。よくマネジメント術で、部下のコメントにたいして「YES、BUT」方式が採用されます。これは「いいねえ、だけど問題があって」と、まずは認める方法です。しかし、結局はBUTで終わるのであれば、誰も新しいことをやろうとしません。ここは「BUT、YES」であるべきではないでしょうか。「問題があるよ。でもやってみようか」と前向きに結論づけ、部下に自信をつけさせるべきです。

これを読んでいる方々の部署には、現在、審議中の施策があると思います。ぜひ、とりあえず「何でもやってみろ」と結論づけてみませんか。中長期的に考えると、部下に試行錯誤できる胆力をつけさせることが何より重要なのです。

私が20代のころです。私が「こういうことをはじめようと思っているんですが」と相談すると、上司は「バカヤロー。そんなこと俺に相談するな。相談されたら規則がどうだとか説明しなきゃいけねえじゃねえか。失敗したときだけ来い。そしたら責任だけは取ってやる」といってくれました。私は、そのFさんにいまだに感謝しています。

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