地に足の着いた調達部門の作り方(坂口孝則)

固有名詞をあげられないものの、兵庫県神戸に本社を持つ企業をコンサルティングしていまして、大変、私自身が勉強になりました。というのも、ここは、ほんとうにお一人お一人が勉強熱心なのですよ。

コンサルタントの先輩から「クライアントのレベルが高すぎて困ったことは一度もない」と私は聞かされました。たしかに、コンサルタントを始める前に、「私ができるだろうか」と思ったことがあります。ただ、実際に始めてみれば、部長や役員クラスは別にしても、現場担当者からあまりに高度なレベルの質問をもらったことはありません。

でも、兵庫県神戸に本社を持つ企業からはたくさんもらいました。私はほとんど質問をもらって「困る」ことはありませんが、回答に困るほど難しいご質問を何度ももらいました。とはいえ、それは突飛な質問ではありません。決算書の本質的な見方だとか、見積り査定におけるチャージレートの根本的な見方だとか、そういう「地に足の着いた」質問です。

私は、この質問は凄いな、と思いました。というのも、多くの担当者は『見積価格を下げること』しか考えていません。相見積もりとって、はいおしまい。悪くいえば、派遣やパートの女性でも可能な仕事なんですよ。そこから細かく見積り査定をしようと思っていない。

でも、「地に足の着いた調達部門」であれば、もっと深く現場主義な質問をしてくれる。私も真剣に答えましたし、何よりも仕事が楽しかった。素直にそう思いました。

私は、調達・購買施策がカタカナに支配されることを嫌います。「なんたらソーシング」とか、「ITなんたら」とか「なんたらマネジメント」とか、ほんとうにくだらない、と思います。いや、もっといえば、そんな言葉を発するひとたちは死ねばいいのに、と思います。そんな手を汚さない調達が、製造業にいていいのか? そんな調達部門なら、なくなればいい。すみません、言い過ぎました。「なくなればいい」は「潰れてしまえ」に言い直します。

ITを使った調達・購買なんかより、非効率的だっていい。もっと現場を見て、パフォーマンスを廃し、本質をとらえる調達・購買部門がいい。私は地道な見積り査定や、地道な工場監査ができないくせに、何がITだ、と思ってしまうのであります。おそらく、もう少しすれば、行き過ぎた効率化の反動がくるでしょう。おそらく、それは宿命なのです。

それでです。前述の兵庫県神戸に本社を持つ企業に訊いてみたのですよ。どうしたら、現場に根ざした調達・購買部門ができるのか、と。お答えは単純でした。「当然のことをさせたまで」だと。そのとおりですよね。

見積りで疑問があったら、わかるまで調べる。交渉過程でわからないことがあれば、わかるまで質問する。さらにわからないことがあれば、わかるまで勉強する……。調達・購買はABCといいます。アタリマエのことを、バカになって、チャントやる。このABCです。

笑うところではありません。実は、私はこのことをずっと述べてきたのです。つまり、新たなトレンドに流される必要はない。重要なのは、ただただ粛々と、自分たちに必要な施策をやり続けるだけだ、と。

でも、今回、あらためて気づきました。ABCこそが、「地に足の着いた調達・購買部門を作る」ということに。

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