日本でものづくりが消滅する日と調達部門(坂口孝則)

今年のはじめ「週刊ダイヤモンド」には、コニカミノルタのCEO山名昌衛さんの感動的な、熱いインタビューが掲載されました。内容は脱炭素に関するもの。「環境対応がコスト、ボランティア」だと考えている経営者は失格です、とまで言い切っています。

そして、山名さんは日本社会への苛立ちも隠しません。環境をどんなにがんばっても株式市場で評価されない、と。山名さんは、環境に対応することが企業価値を高めるとエビデンスを出さねばならない、と断言しています。つまり一見、環境対応はコストがかかるけれど、企業活動の前提になっているんだと。環境対応こそが合理的なのだと。

同時に、強い危機感を有しています。再生エネルギーの使用率の少ない日本では、もはや国内に工場を持てなくなる現実が目の前に迫っているのに、国内企業はゆっくりとしか反応していないからです。実際に多数の企業では、温室効果ガスの発生を減らす道筋も立てていません。

アップルは素早く、サプライヤを含めて再生エネルギーを使う大胆な戦略を打ち出しました。

ところで、私は数年前から、電力会社の方々と話す機会が多いのですが、ここでも日本政府の対外的なヘタさを見ます。世の中では、いつの間にか火力発電がダメだということになっています。しかし、日本の新型火力発電方式は、電力効率が圧倒的に高いと知られていません。世界の火力発電が日本式に置き換われば、大幅にCO2を削減できます。さらにエネルギー調達の観点からも安全性が高いことも知られていません。

しかし日本政府は世界に向かって伝えるのが上手くないためか、いつの間にか日本のお家芸である火力発電は淘汰の方向に運命づけられているように見えます。同時に小型原子炉の議論も進められない日本は、手詰まり状態にあります。

トヨタは、ハイブリッドのほうが電気自動車よりもサプライチェーン全体のCO2は減り、さらに使用水量や窒素酸化物も少いと正しく主張しました。これについては諸説あるので、あくまで私が正しいと思う、という意味です。しかし、世界の潮流には抗えず、EUでは電気自動車で統一されそうです。

私たちは、アップルの例にあるように、自社単独ではなくサプライチェーン全体の温室効果ガス削減に向けた取り組みが求められます。サプライチェーンで見れば、大半は自社ではなく、サプライヤの排出量が占めます。そしてそれを担うのは調達部門のはずですが、まだ反応は芳しくありません。手詰まりのなかで、何をやっていいのかわからないためでしょう。

企業の機密は保持せねばなりません。しかし、日本の産業としていまこそ一致団結する必要があるように思います。成功事例の共有や、情報交換などが必要とされる時代なのではないでしょうか。

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