常識が通じない時代の調達業務とは? (坂口孝則)

Yahoo!のアンケートを見ておりますと、東京などに緊急事態宣言が出る前は「緊急事態宣言をすぐ出せ」が国民大半の意見でした。しかし、緊急事態宣言が出ると「効果はない」が大半になりました。これをどう解釈していいか迷っています。

しかし、簡単にいえば社会の空気はすぐに変る、という解釈が正しいのでしょう。それは国民だけではなく行政も一緒です。

日本という国は、切羽詰まったらなんでもやる国です。これは若い人はぜひ覚えておいてください。1964年のオリンピックの前、景観を良くするために、猥雑な飲み屋街は雑居ビルに集められました。新橋駅前ビルやニュー新橋ビルはその流れです。安全上の問題があるといって、それまで31メートルしか建てられなかった高層ビルも、前回のオリンピック前には建築基準法がいきなり改正されました。警備する警察の人材が足らないとわかると、警備業務を民間に開放しました。

現在、実質上、日本では解雇が難しい状況ですが、これもいきなり変わるでしょう。年金は廃止されることはないでしょうが、受給年齢が延長、受給額の縮小は予想されます。

信じられるのは自分しかいません。少し前まで、カーボンニュートラルや温室効果ガス排出量が地球温暖化に影響しているか懐疑論もありました。しかし、いきなり温室効果ガスを実質ゼロにしなければ、もはやビジネスすらできない状況になりつつあります。もう社会がその方向に流れているので、どうしようもありません。なお私は温室効果ガスが地球温暖化に影響を与えていないと信じているわけでもありません。あまりにも議論が極端すぎると思うだけです。

RE100という動きがあります。これは2015年にイケアと国際機関がはじめた再生エネルギー利用を促進するものです。宣言に賛同する企業は将来的に事業活動の100%を再生エネルギーに切り替える必要があります。さらに宣言企業は、自社だけではなくサプライヤにたいしてもLOI(レターオブインテント)にサインをさせ、カーボンニュートラルな製品しか納品させないと促していきます。

アップルはRE100に早くから取り組み、風力や太陽発電を進め、サプライヤを巻き込んでいます。これらエネルギーは日本企業が高コストで苦しむところで、これ以降の苦戦が予想されます。

電気自動車とハイブリッド車はどうでしょうか。いま世の中が電気自動車だけに突き進んでいます。しかし電気自動車用のバッテリーを生産する過程、発電過程まで計算すると、ほんとうに良いといえるのか。あるいは水資源の利用量を計算すればハイブリッド車のほうがいいのではないか、という議論も盛んにはなりません。

いや、繰り返しますと、私はRE100を否定するものではありませんし、電気自動車の流れも否定しているわけではありません。ただ、同時に現在の正解が移り変わる可能性をも「自ら」考えて戦略を構築するべきだと思うのです。これも繰り返しますが、社会の空気はすぐ変わります。

この混迷の時代に、何をすればいいか。もちろん、答えはそれぞれが考え抜くしかありません。ただ、できるだけ多くの材料を用意し、進むべき道を考える土台を提供したいと思います。

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