調達担当は2022年も騙されるのか(坂口孝則)
先日、衝撃的なニュースが入ってきました。アップルのティム・クックCEOが中国と、2750億ドルの契約を締結したと報じられました。アップルが中国の経済発展へ寄与すると約束したかっこうです。アップルが中国での成長を見込むための投資で、米中経済戦争の悪化を懸念したものでした。
さらに先日に報じられた内容ではアップルが中国国内のIT企業にも巨額な投資をするようです。またアップルは中国のサプライヤからの大量の調達も約束しました。その代わりに中国サプライヤは先進的な技術や労務状況の改善を約束しています。これは2022年も続きそうです。
アップルは中国サプライヤと再生エネルギーを通じた連携も知られていますが、あらためて蜜月の関係が確認されました。
アップルは米バイデン政権のアドバイザリー的な立場です。アップルの動向はバイデン政権に情報が届いていたのは明確です。ということは、バイデンの述べる中国批判は米国内の批判をかわす役目でしょう。建前では中国を非難しつつ、それは国内向けのアピールでしかありません。本音では中国との連携をむしろ強化しています。
米国ではウイグルで生産した物品の輸入を禁じる法案が可決しました。これは新しい傾向ではありません。これまでもウイグルからの綿を起源とした生産物は輸入を禁じていました。ただ、製品のカテゴラリーに限らず、ウイグル産であれば禁じるようになります。
ウイグルだけではなく、2021年は政治的な建前と本音が離れてしまう一年でした。
ウイグルだけではありません。欧州は政治的なアピールとして脱炭素を強調しました。しかし2021年にはこれまで即時撤廃を求めていたLNGなどを認める姿勢に転じました。ひどいよね。しかし政治のパフォーマンスと考えれば理解できます。
欧州の政治家は本音と建前を使い分けて主張します。しかし問題は日本の産業界です。
「ぶっちゃけ2050年にカーボンニュートラルなんて無理じゃないか」
「ぶっちゃけウイグルの代替調達先はないのではないか」
「ぶっちゃけSDGsなんて不可能ではないか」
そういった本音が表出するのが2022年ではないでしょうか。そして、どこまで本音を訴えて、産業界としてどうするのかを考える一年になるのが2022年のはずです。
世界の本音と建前。そして、実務の調達担当者としては何を考えるべきか。それを伝えねばならない。私たちのミッションは明確です。2021年はありがとうございました。2022年もよろしくお願いします。世界のウソに騙されない、強い個人を目指しましょう。