テレワークの縮小が必然でしかないワケ(坂口孝則)
みなさん「東洋の魔女」をご存知ですか? 1964年、前回の東京オリンピックの際に金メダルに輝いた女性バレーボールチームです。あまりの強さに魔女とも呼ばまれました。
ただ、意外に知られていないのは、彼女たちの大半は大日本紡績に属していた事実です。現在のユニチカですね。バレーボールは19世紀に米国で工場労働者のレクリエーションとして開発されました。そして日本では、その運動を通じて、会社を一体化しようという意図がありました。「東洋の魔女」たちは、運動部として一括にされず、寮では別々の部屋に住んでいました。そして同室の女性たちに興奮と感動を与え続けました。
「東洋の魔女」たちは他社員と生活を共にし、場を共有したので、彼女たちの勝利は会社の勝利であり、さらに自分の勝利でもありました。そのときから、日本の職場では、場に集うことが重要でした。
現在、テレワークの率が下がっています。昨年の緊急事態宣言下では3割を超えてたところ、現在では各種調査によっても2割ていどしかありません。
これは通信機器やハンコ文化の責任にもできるでしょうが、私が思うに仕事が個人に属しているのではなく、場に属している点に原因があります。場に集って、さまざまな業務をこなして一体感を得る手法しか多くの企業はもっていません(「メンバーシップ型雇用」と呼びます)。
なおロンドンには夜の街はありません。たとえばフランスのパリにも観光客向けの夜の街しかなかったのは驚きでした。なぜならば、夜の街は、場に集った会社員たちが残業したあとに慰労や接待などで使用するのを前提としているからです。
テレワークを推進しようと思えば、事務職であっても個々人の業務を規定し、目標や成果を明らかにするべきです。そうすれば、別にどこで働いていても問題ありません(「コブ型雇用」と呼びます)。
ところで、ここまでお読みになると、私が場に集うことを否定しているように感じられるかもしれません。しかし重要なのは、メンバーシップかジョブか、方針の明確化です。それによって労働者側も、働きたい、辞めたい、の態度を決める時期なのかもしれません。
ある識者は「コロナ禍後から、ほんとうの21世紀がはじまる」といいました。先日、私の主催したオンラインセミナーには、リアルイベントの3倍もの視聴者がお越しいただけました。ただ、あるていどのリスクをとってリアルに集まるのも、一つの思想でしょう。
すべてをジョブ型に舵を切るにしても、製造現場、工場監査といった集合を前提とする、非オンラインの業務は残ります。ただ繰り返すと、重要なのは場か個人かという大方針の決定なのではないでしょうか。
ワクチン接種後はすべてが元通りになるのであれば、ある意味もったいない。大方針と新たな業務のカタチが求められているのです(下のオンラインセミナーもよろしくお願いします)。