テスラとCSR調達とビットコインの注目点(坂口孝則)
先日、報道を見て驚きました。テスラのCEOイーロン・マスクがビットコインについて言及しました。テスラがビットコインを15億ドル購入したというのです。同社は、クルマの支払いにもビットコインを使用できるようにする可能性があるということ。イーロン・マスクの発言を受けてビットコインは高騰しました(当原稿執筆時点では下落)。
これにはいくつかの感想がありますが、ここでは二つに絞ります。まずビットコインは買うだけではなく、マイニングによって生成できます。このマイニングは世界中の業者が取り組んでいます。ただ莫大な電気代が必要で先進国では成り立ちません。しかしビットコインが急騰すればマイニングする業者は増加するはずです。
そうなれば、使用する電気代や電力量は増えていくはずです。そうなると電気自動車の会社が、電気代を引き上げ、電力量を逼迫させようとしているのです。明らかに「持続可能な社会」の概念と乖離しています。矛盾した行為です。これが一つの意見。
もう一つの意見は、同時に同社の発電システムを活用しようとしていたらどうでしょう。同社はバッテリーシステムに強いのは周知の事実です。クルマの屋根に太陽光パネルを付属させ、電気を生み出し、さらにあまった電気を使って、クルマのユーザーにビットコインのマイニングに参入させようとしていたら。自動車メーカーかつ家電メーカーかつ仮想通貨事業もてがけることになったら。いや、私の夢想ですが、みなさんはどう思いますか。
ところで、さきほど「持続可能な社会」の話を持ち出しました。ここから話をちょっと変えるのですが、ぜひみなさんにCSR調達の観点から注目いただきたい2社があります。テスラとNVIDIAです。URLは貼りませんが調べてみてください。サプライヤになかなか面白い要求をしています。
テスラはサプライヤにサプライヤの従業員を平等に扱うように命令しています。「人種、肌の色、宗教、婚姻状況、年齢、出身国、祖先、身体あるいは精神障害、医療状態、妊娠、遺伝情報、性的嗜好、(略)等で差別されるべきではありません」と。(略)と書いたんですが、あまりに多数が羅列されています。実質的に年功序列を採用し、あからさまな男性社会である日本企業はテスラのサプライヤになれないことになりますね(笑)。いや笑い事ではありません。一読をオススメします。
次にNVIDIAは主要サプライヤへ四半期ごとの評価を実施するなどの徹底したレビューを宣言しています。さらに、サプライヤとサプライヤの労働者とは、いかなる言語であっても労働者の母国語での契約書等を結ぶことを要求しています。また、技能実習生等を採用する際に、彼ら彼女らが母国で支払った関連費用を、サプライヤがすべて肩代わりすること、などの文言が並んでいます。これも一読をオススメします。
日本企業はサプライヤとも同質を前提とする「あうんの呼吸」で取引を進めてきました。しかし、今更ながらに大きな転換点を迎えようとしています。前述のように、産業のビジネスモデルが変化し、調達行為も変化します。さらには企業間の取引関係も、異常なほどクリーンなものに変容せざるをえなくなっているのです。