すばらしい調達・購買部門をご紹介します

先日実施したアンケート「東日本大震災から10年 企業のサプライチェーン管理はどのように変わったか?」には、たくさんの皆さまから御回答をお寄せいただきました。謹んでお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

現在アンケート結果を集計しコメントを加えブックレットにまとめています。まず先行でアンケートに御回答いただいた皆さまへお届けする予定です。御回答にはいくつも印象的なコメントがありました。私がもっともびっくりしたのは「在庫活用」の考え方に生じている変化の胎動です。

 

東日本大震災発生後、日本国内のみならず世界のサプライチェーンが混乱したのは皆さまの御記憶にも新しいでしょう。大震災や津波の影響で生産ストップに陥った後、被災した工場の再稼働状況をつぶさに観察していると、おおむね2か月後には100%でないにしろ供給再開しました。私はその2カ月間を「想定断絶期間」と命名し、サプライチェーン断絶防止対策の1つのアイデアとして、「想定断絶期間」に必要となる在庫の確保を、セミナーやコンサルの場面で繰り返し伝えてきました。多分調達・購買部門を顧客にするセミナー講師、コンサルタントとして「在庫を積み増せ!」と主張するのは、世の中でも私だけだったはずです。在庫は「罪庫」として削減すべき対象ですからね。

 

予想どおりセミナーを受講された方やコンサル先での反応は冷ややかでした。有効性までは理解していただけても社内に言い出せない、そんな反応をしてくださる方でさえごく少数。反応の多くは選択肢にすらならないのが現実でした。

 

今回のアンケートでは、品目を絞り込んで在庫数を見直していたり、人手不足で管理の行き届かないアイテムで在庫化を検討したり、在庫を「財庫」として扱ってサプライチェーンの断絶防止の取り組みを行っている方がおられました。現時点で在庫積み増しは実現できないものの、その必要性を社内へ訴えていくといったコメントもありました。東日本大震災発生直後「在庫積み増せ!」の主張への冷たい反応を思い返して、そんなコメントに驚いているのは誰より私自身です。

 

「在庫積み増し」コメントに共通している点があります。購入品のサプライチェーン断絶防止は、調達・購買部門だけではなく社内関連部門全体の取り組みが必要であるとの認識です。在庫を積み増す「数量」は、営業からの受注や販売の見通しが必要ですし、購入した在庫を使用するまでの品質保持には、現場部門の協力による取り組みが不可欠です。全社的な取り組みだからこそ、サプライヤも本気になってBCPやサプライチェーン断絶防止に取り組む好影響もうかがえます。

 

在庫の積み増しに挑戦している皆さまは、何より不確実性の高い自然災害の発生と影響に対して、実効性ある取り組みを模索しているのです。もちろん品目や購入量を背景に、購買力の多寡によっても在庫化が適切かどうかの判断は分かれます。私はサプライチェーン断絶防止対策の選択肢の1つとして在庫化も考慮すべきといってきました。闇雲に東日本、西日本と海外にサプライヤを確保するといった平常時の経済的合理性を無視するような発注方針よりも、在庫化なら周辺整備を行えば実効性が担保できます。もちろん運転資金の増大といったマイナスの側面は解決すべき課題です。そういった提案を憶することなく社内に行っている調達・購買部門こそ、何よりすばらしいと感じているのです。

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