誰が壁を作るのか

以前、関西購買ネットワーク会に出席しました。印象的だったのは最後にバイヤのお悩み相談会。幹事の皆様の工夫によりお悩みの内容がイラストで表現され、相談者の置かれている状況が非常にわかりやすく伝わってきました。いくつかの悩みを聞いた結果、バイヤの最大の悩みは、バイヤ自らが「できない」と考えや行動を自ら「制限」し、「壁」を作ってしまうことだと感じました。悩みの原因は自分にあるのです。

 

仕事に限らずさまざまな取り組みで、解決へと導く方策を見いだせずに立ち止まってしまう事態は誰にもあるでしょう。購入要求で指示を受けた納入日や予算は必ず遵守しなければならない厳しい状況の中、どうすればよいかと途方に暮れるバイヤは多いはずです。

 

途方に暮れるのは、具体的な対応策が見つからないからでしょう。しかしちょっと待ってほしいのです。途方に暮れている状況を分析して、自分で勝手に制約条件として「できない」と判断している点はありませんか。

 

・値上げ要求が次から次へと到来し、コストダウンなんてできない

・うちには購買力がないから、よい購入条件など引きだせない

・価格交渉や納期繰り上げ要求にも「このサプライヤからしか買えない」から、交渉が成り立たない

 

こんなふうに考えているとしたら、自分で勝手に作った制約に自分で苦しむ状態です。たとえば最後に例示した「1社からしか購入できない」状況、本当に1社からしか買えないのでしょうか。

 

私は「1社からしか買えない、他にサプライヤがいない」事態は、あり得ないと考えています。バイヤが到達可能なマーケットに他の発注可能なサプライヤがいないだけです。他の地域や国、目の届いていないマーケットには必ず購入可能なサプライヤが存在します。したがって「1社からしか買えない」のではなく、問題の本質は購入可能なサプライヤとめぐり会えていないだけ、そして1社しかいない「判断」そのものが問題なのです。

 

もし業務上でなんらかの「壁」にぶち当たってしまった場合、その壁は「誰が作ったのか」について思いを巡らせてください。次に「自分で作っていないか」と自らに質問してみてください。「できない」壁を作れば誰にメリットがあるのか。「できない」理由は成果を出さなくてよい免罪符になり、結果的に成果がなかったときの言い訳へとつながるのです。

 

そこまでを理解して、あえて自分で精巧な「壁」をつくっているのなら、サラリーパーソンとしての処世術かもしれません。しかし自分で作った壁に自ら苦しんでいるのなら、そんなバカバカしい話はありません。解決は簡単です。「できない」と思っていることに「本当か?」と問いかけてみましょう。そして信頼できる同僚や先輩に「どう思います?」って聞いてみましょう。バイヤの悩みは、バイヤに聞くのが一番ですからね。

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