交渉に必要な「思いやり」とオジさんの役割

先日勤務していた会社の同僚からこんな話を聞きました。

 

「最近の若手は押しが弱くサプライヤの言いなりになるケースが多い」

 

その同僚は20代の頃から調達購買部門で一緒に働いてきた仲間です。現在は、大手企業の責任ある立場で調達購買部門を統率する立場にあります。せっかくの問題意識を「最近の若手対オジさん」の世代論にするのはもったいなく思えました。せっかくの機会なので少し掘り下げて自分たちが若手だった頃、どんなふうに交渉を学んだかについて一緒に考えてみました。すると3つのポイントが浮かび上がりました。

 

1.         交渉相手は1(社、者)つではない

まずサプライヤと交渉で問題に直面したとき、上司に相談しどんなふうに事態を打開したかを考えました。サプライヤと交渉ですから、基本的には交渉の席上で事態打開を行わなければなりません。しかしサプライヤとだけではなく予算管理部門や購入要求部門とも打ち合わせを重ね、交渉準備としてサプライヤと合意できる条件の模索を重ねていました。サプライヤと交渉するため、社内関連部門とも「交渉」を重ねていたのです。交渉で合意すべきターゲットを考えるとき、合意可能な領域を増やした方が交渉もスムーズに運びます。合意可能領域を広く設定して、その中で自社に有利な結果を導く、そういったノウハウを若手に伝えられているかどうかについて確認が必要だと考えました。

 

2.         交渉は勝ち負けではない

討議してもなかなか難しく意見が分かれる部分です。個々の交渉では、要求が受け入れられた、あるいは受け入れられなかったといった「勝ち負け」に相当する結果があるでしょう。しかし同じサプライヤと複数の異なる案件について交渉する場合、すべての案件で100%自社の要求内容が受け入れられるケースは非常にまれです。自社の勝利ばかりを追い求めるより、サプライヤに負けたと思わせず、バイヤ企業の調達購買部門のみならず、社内の理解が得られる結果の両立が最終的な交渉のターゲットだと考えています。

 

3.         交渉に必要なのは思いやり

「思いやり」サプライヤが合意したい内容についてバイヤが思いを巡らせているかどうかです。「思いやり」は親しい間柄の相手への配慮とは少し異なります。サプライヤとの交渉でバイヤは自社に有利な結果を獲得しなければなりません。相手のことだけ思いやるのは、売買の交渉の場では不適切です。しかし自社の要求を相手に飲ませるだけの一方的な主張による交渉は、サプライヤにも受け入れ難いでしょう。サプライヤが受け入れられる条件をある程度想定し、自社の要求とのギャップを明確にする。その上でギャップの解消をどのような手段で行うかを「交渉準備」として自ら考え、ギャップ解消案を準備しなければ、交渉は成立しない可能性が高いのです。

 

交渉論は、人と人が隠すにしろ出すにしろ感情を交えて行う生ものです。そして「若手」にとって、何十年も同じ会社で勝負しているサプライヤの営業パーソンは、経験の差だけをみても不利な要素が多分にあります。不利な要素をできるだけ取り払う取り組みが、私たち「オジさん」の役割なのです。

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