第八回:情報収集と活用

活用性の高い情報を持ち続けることは、開発購買でも目的達成のための重要な活動の一つです。これは、調達・購買取引先との打ち合わせや交渉などにおいても、大きな力となります。さらに、開発・設計部門などの社内他部門との連携において、開発購買の存在感ならびに担当者の付加価値を示す有力な手段となります。情報を効率的に収集して、実効性のある情報発信をすることが、開発購買には求められます。

情報の種類には、社外から得るものと、社内のものがあります。調達・購買部門が対象とする社外・社内の情報は多岐にわたりますが、このなかでも開発購買に特に必要とされるものを述べます。

1. 社外情報

社外から得られる情報は多伎に渡ります。その中でも、当社顧客の市場・製品トレンドの把握は、開発購買にとって重要なものです。それは当社にとっての動向であると同時に、調達・購買取引先にとっても同様にニーズの動向となるからです。取引先の新製品開発、新技術開発に影響を与えるものです。

この市場・製品動向は開発購買が自ら様々な手段を通じて、調べることも必要ですが、自社の営業部門にヒアリングしたりするとより広くかつ深く情報が入手できます。これらの情報を基に、次の視点でこの市場動向を把握し、調達・購買取引先市場への影響を考察します。市場動向から部品や材料の動向を推察し、情報収集をするのが開発購買担当としての任務となります。

(1) 当社顧客の市場・製品の動向情報

この全般情報で、特に注目するのは市場の規模と価格の動向です。これらの動向から、調達・購買取引先市場への影響を推察します。開発購買の視点からは、拡大する市場に対応するための新製品開発活動、価格競争に対応するためのコスト削減活動などの情報を得るようにします。

(2) 競合会社の最新製品情報

競合会社(特にリーダー会社)の最新製品情報を自社の営業部門や専門誌から得たら、主要な部品や材料への調達・購買取引先での新製品・新技術への影響を考察します。ちなみに、この分析・調査をする手法のひとつに、ティアダウンがあります。

(3) 当社顧客の開発・設計に関する情報

B to B事業で部品やユニットを販売している場合、当社顧客の製品設計コンセプトの変化への留意が必要です。たとえば、現在当社が販売しているユニットを顧客が他の機能と組み合わせるような設計に変える計画がある場合は、当社が調達・購買している主要部品・材料は現行のままで対応できるか、より適切な部品・材料はないかなどの検討が必要になります。

(4) 調達・購買取引先や売込会社からの情報

調達・購買取引先や売込会社との打ち合わせは、新鮮な情報を得る良い機会です。前もって、質問事項を整理しておき、効率的な情報収集をすることが必要です。

① 重要な調達・購買取引先との(定例)会議
この(定例)会議では、量産調達・購買活動に関連している「価格、納期、品質関連の実績」に加えて、開発購買に関連した事項の討議・意見交換・情報交換も行うようにします。例えば、取引先の新規製品開発についての情報入手です。より前向きな討議にするためには、ギブ・アンド・テイクの姿勢が大切で、当社からも今後の市場動向にそった当社の製品開発、売上計画などを説明することも必要です。

② 取引会社の経営者の訪問
年末年始などのある特定の機会に、調達・購買取引先の社長や役員などが挨拶にくることがあります。その取引先の経営環境や中長期的にその取引先が事業で目指す方向を知る良い機会です。

③ 新規売り込み会社の訪問
既存の調達・購買取引先からは得られない情報を入手できる良い機会として、活用すると良いでしょう。多忙を理由に訪問を断わったりせず、積極的に面談し情報を充実させましょう。

(5) 業界などの展示会
業界などの内外の多くのメーカーなどが出展します。出展会社にとって、は開発中の製品・技術などを来場者にアピールする場でもあります。訪問対象の会社、収集する情報などを予め検討し、十分な準備をして訪問し、効率的かつ効果的な情報収集をすると良いでしょう。

2.社内情報

社内経営層や他の部門からの情報は、開発購買の方向性、活動を具体的に絞り込むものです。自社内の経営層・他部門から得る情報と、その活用目的は次の通りです。

(1) 経営層・事業部門トップ層
得るべき情報:中長期計画の売上計画・成長目標分野(市場ならびに製品)
活用目的:取引先との価格交渉、重要取引先からの情報入手、新規取引先・新規調達・購買部材開拓の方向性理解

(2) 営業部門
得るべき情報:顧客からの受注見込み、(BtoBの場合さらに)顧客新規開発品のサンプル数量・時期、量産立ち上げ時期
活用目的:新規開発品の受注数量計算、量産立ち上げ時期・数量の把握

(3) 開発・設計部門
得るべき情報:新製品技術・部品・材料方向性
活用目的:新規取引先開拓、新規調達・購買品開拓

(4) 品質保証・管理部門
得るべき情報:調達・購買品の影響による工程・市場不良
活用目的:当社新規開発製品の調達・購買取引先の選定、および当該取引先の品質保証体制・品質管理体制の改善

→2018年7月24日(火)に「開発購買セミナー」を実施しますのでご興味があればご覧ください。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

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